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- 電気代高騰時代の全館空調にはパッシブデザインとシミュレーションが不可欠
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OMソーラーの村田です。
今年の冬は厳しい寒さと電気代の高騰により、改めて暖房の方法に関心を持たれた方も増えたと思います。
また、早くも今年の夏は例年以上に暑いというニュースも目にします。
電気代の高騰についてその場しのぎの対策は多く紹介されるものの、家づくりで対策できることはたくさんあります。
そこで、今回は「設計」に焦点を当てて、快適さと省エネを両立させる手法をご紹介します。
目次
3. ただし、室温や電気代は複雑な要素の結果なので簡単には答えが出ない
4. まとめ
このご時世に全館空調はあり?
昔から住宅会社のパンフレットには「冬暖かく、夏涼しい家」といった言葉が使われていましたが、現在の住宅会社のパンフレットやホームページでは、もう少し具体的に「ヒートショック対策」「熱中症対策」といった言葉が並び、その対策として高気密高断熱や全館空調を提案されています。
一方で今年の冬は、「電気代高騰のため、できる限りエアコンも使わない工夫をした」もしくは「我慢している」といった声がテレビでも繰り返し紹介されています。
エネルギーの浪費は短期的にも長期的にもあり得ないことですが、これから建てる住宅においては、エネルギー消費をできる限り抑えた上で、健康的で命を守る住まいが当たり前になるべきと私たちは考えています。
その方法が省エネによる全館空調であり、そこには省エネ機器の導入と建物本体の設計が重要です。
断熱性能だけでは快適や省エネの実現に限界がある
快適と省エネの対策として真っ先に上がるのは断熱性能です。
今や断熱性能に関しては一般のお客様からも「断熱等級」とか「G2」といった言葉が出てくるほどです。
もちろん断熱性能が重要であることは間違いなのですが、それだけでは不十分です。
これについては、2019年の時点で日経アーキテクチュア(4月号)に、
「近年はUA値競争に夢中になるあまり高断熱なのに寒い家が目に付く」
「暖かく暖房費を安くすることが本来目指すこと」
と東京大学・前准教授が書かれていますが、いまだに断熱性能だけが注目されているようにも見えます。
実際に断熱性能だけで室温が決まるわけではないことを図1のグラフが表しています。
実線が「日射あり」、点線が「日射なし」における室温で、「日射ありのH28年基準」の方が、「日射なしのG3」より暖かいことがわかります。
図1:冬季の日照の有無による室温シミュレーション
※「ホームズ君省エネ診断エキスパート パッシブ設計オプション」(インテグラル社)による計算
ただし、室温や電気代は複雑な要素の結果なので簡単には答えが出ない
前述のように、快適や省エネの実現には、断熱性能だけではなく、日射などのパッシブ要素も上手く取り入れることが大切だとわかります。
ただ、日射は冬はたくさん欲しく、夏は少しでも遮りたいものなので、設計上どのような対策をとるかを考える必要があります。
こうした視点で、断熱性能はもちろん、日射取得や日射遮蔽、さらに採光や通風まで多岐にわたる要素から設計を考える手法がパッシブデザインです。
そのため、その効果は感覚ではなく、数値で把握する必要があるので、シミュレーションを使って判断する必要があります。
図2:日射(左上)、室温(右上)、照度(左下)、光熱費(右下)のシミュレーション画像
しかも、図3にあるように、室温は建物性能だけでなく、気象条件、さらに使用条件の影響を受けます。そしてそれらは四季はもちろん、1日においても常に変化しています。
図3:インテグラル社提供画像
他にもシミュレーションでは室温だけでなく、光熱費も導き出すことが可能です。
こうしたシミュレーションを利用して「居室間欠エアコンの家」と「全館空調(OMX)の家」の冷暖房エネルギーを比較したものが図4のグラフです。
グラフからは全館空調の方が冷暖房エネルギーの消費量が少ないことがわかります。
図4:居室間欠暖房とOMXの冷暖房負荷の比較
このシミュレーションは設計者がプランを検討する際に利用するだけではなく、その結果をお客様とも共有しながら家づくりを進めることが使い方のポイントです。
入居後のお客様から「思ったより寒い」とか「電気代の高さにビックリした」といった言葉が出たとしたら、設計時の説明不足が原因の場合もあります。
「予想以上に快適でした!」という言葉を聞くのはうれしいことではありますが、本来であれば「事前の説明通りだったので、さすがだと思いました」であるべきです。
また、お客様にとって光熱費は住宅ローンと同様の毎月のランニングコストですので、光熱費予想は資金計画を検討する上でも重要なデータになります。
「電気代として払うお金を減らして、その分を住宅に投資する方が快適で経済的な暮らしができます!」と提案するためにもシミュレーションは不可欠です。
図5:光熱費と電気代の合計が住まい手にとってのランニングコスト
まとめ
パッシブデザインは建築的な手法で温熱環境を整え、快適な空間、快適な時間をできるだけ広げることを目的としています。
この快適の実現には設備の導入も不可欠で、基本的な設計から細部の工夫、設備機器の能力を総合的に評価した適切な組み合わせが必要です。
そしてそれを判断するためにはシミュレーションが不可欠になります。
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