健康

「住まいと健康」に関する共同調査 第2弾報告
就寝中の寝室室温が低いと、起床後に測定する朝の血圧は上昇

-就寝中の平均寝室室温が10℃低下すると、朝の血圧は7mmHg上昇-

OMソーラー株式会社と、慶應義塾大学 理工学部(伊香賀俊治教授)、自治医科大学 循環器内科学部門(苅尾七臣教授)、オムロンヘルスケア株式会社(本社所在地:京都府向日市、代表取締役社長:荻野 勲)は、「住まいと健康」についての共同研究により、就寝中の寝室の室温が、起床後の血圧に与える影響についての実証調査の結果をまとめました。

2015年4月には、部屋の上下間の温度差と血圧の関係を検証し、「足元付近の室温が10℃低下することにより、血圧は平均9mmHg上昇」といった結果を発表いたしましたが、今回の発表では、就寝中の寝室の温度変化と血圧の関係について「就寝中の平均寝室室温が10℃低下すると、朝の血圧は7mmHg上昇」といった結果を発表しております。

今回ご報告する調査の概要、結果の詳細は次のとおりです。

本研究では、室温の変化が血圧に与える影響についての調査を行っています。今回は、冬季の実生活場面での就寝時の寝室の室温と、起床後に居間で測定した家庭血圧、また寝室と居間の室温差に関する実測結果の分析を行いました。

その結果、就寝中の寝室の平均室温が10℃低くなると、朝の平均収縮期血圧は7mmHg高くなる傾向が見られ、寝室の室温の変化が大きい住環境では朝の血圧への影響が大きいことが示唆されました。寝室に加えて血圧測定時の居間の室温についての分析も加えたところ、居間の室温が18℃以上と高い場合でも、寝室の室温の変化が大きい住環境では同様の血圧上昇結果が見られ、朝の血圧の上昇を防ぐには、居間の室温管理だけではなく、就寝中の寝室の室温管理が重要であることが明らかになりました。

また、就寝時の居間と寝室の平均室温を比較すると、断熱性能の高い住宅*1では温度差は平均1.5℃であったのに対し、断熱性能の低い住宅では平均5.5℃の温度差が見られました。中には、居間の室温が20℃でも、寝室の室温は約5.0℃の住宅もあり、部屋によって室温差が大きいことがわかりました。

脳卒中や心筋梗塞などは早朝から午前中に多く起こることから、本来は低いはずの朝の血圧が高い「早朝高血圧」*2を予防することが重要とされています。

今回の調査により、早朝高血圧の予防のためには、睡眠中の寝室の室温管理が重要であること、また住宅内での室温差管理が大切であることが明らかになりました。

  1. 平成11年に改訂された断熱基準(次世代省エネ基準)を満たしている住宅

  2. 人間の血圧は一日のうちで常に変動しており、その変動の仕方には個人差があります。正常の血圧の人では、起床後徐々に上昇し、夕方ごろにピークになり、その後徐々に低下して深夜(就寝中)にもっとも低くなります。しかし、この血圧パターンが変化して、起床後血圧が高くなるケースがあります。これを「早朝高血圧」といいます。早朝高血圧には、起床後に血圧が急上昇するタイプと、就寝中に血圧が下がらないまま起床後に血圧が上昇するタイプがあります。

今回ご報告する調査の概要、結果の詳細は次のとおりです。

実証調査の概要

調査対象

首都圏に在住の35~74歳の男女180名(100世帯*)
*断熱性能が低い住宅への居住世帯46世帯
+高断熱住宅(次世代省エネ基準相当)への居住世帯20世帯+その他

調査期間

2014年11月~2015年2月のうち、各世帯2週間

測定項目

○温湿度
居間(高さ1.1m)、寝室、トイレにおいて10分間隔の連続測定
○ 家庭血圧(最高血圧/最低血圧)
居間において起床後/就寝前の1日2回測定

有効サンプル 138名(87世帯)

本実証調査から得られた結果

1. 就寝中の寝室の室温が低いと、朝の血圧は上昇

起床後に居間で測定した最高血圧値と、就寝中の寝室の平均室温の関係を分析したところ、寝室の平均温度が10℃低くなると、朝の最高血圧(収縮期血圧)は7mmHg高くなる傾向がわかりました。また、寝室の室温に加えて血圧測定時の居間の室温についての分析も行ったところ、居間の室温が18℃以上と高い場合でも、寝室の室温の変化が大きい住環境では同様の血圧上昇結果が見られました。
これにより、朝の血圧の上昇を防ぐには、睡眠中の寝室の室温管理が重要であることが明らかになりました。

※左図は、外気温や暖房器具の使用状況などにより、寝室の平均室温が日によって異なる場合の、起床後に測定する収縮期血圧(朝の血圧)の変化のイメージ。たとえば、平均室温が20.5℃だった日の朝の血圧は129mmHg、平均室温が10.5℃となった日の朝の血圧は136mmHgになることが推定される。

図1 寝室の室温と収縮期血圧(起床後)の関係(イメージ図)

図2 寝室の室温と収縮期血圧(起床後)の関係の具体例(50歳以上のケース)

図3 寝室の室温変化の具体例
(参加者の実測データ)

2. 断熱性能の低い住宅では、居間と寝室の温度差が大きい

就寝時の居間と寝室の平均室温を比較すると、断熱性能の高い住宅*では温度差は平均1.5℃であったのに対し、断熱性能の低い住宅では平均5.5℃の温度差が見られました。中には、居間の室温が20℃でも、寝室の室温は約5.0℃の住宅もあり、同じ住宅の中でも部屋による室温差が大きいことがわかりました。

寒い時期になると脳卒中や心筋梗塞を発症する率が高く要因として、家の中の急激な温度差によって血圧が大きく変動して身体に悪影響がおよぶ「ヒートショック」があげられます。今回の結果からは、居間と寝室の室温差にも注意を向けた方がよいということも明らかになりました。

* 平成11年に改訂された断熱基準(次世代省エネ基準)を満たしている住宅

図4 就寝時の居間と寝室の室温の関係

図4 就寝時の居間と寝室の室温の関係

(参考1)暖房方法の違いにより、居間と寝室の室温差は変化する

平成11年に改訂された断熱基準を満たしている断熱性能の高い住宅のうち、住宅内のすべての部屋を温める全館暖房(太陽熱床暖房)を導入している住宅と、導入していない住宅の就寝時の居間と寝室の平均室温を比較すると、全館暖房を導入している住宅では居間と寝室の温度差はほとんど生じないことがわかりました。

図5 就寝時の居間と寝室の室温の関係(断熱性能が高い住宅)

図5 就寝時の居間と寝室の室温の関係(断熱性能が高い住宅)

(参考2)断熱性能の低い住宅では、起床時の居間とトイレの温度差が大きい

起床時(起床後の血圧測定時)の居間とトイレの平均室温を比較すると、断熱性能の高い住宅*では温度差は平均1.3℃でしたが、断熱性能の低い住宅では居間の室温が20℃でも、トイレの室温は7.0℃の住宅があるなど、居間とトイレには平均で約5.0℃の温度差が見られました。
また、断熱性能の高い住宅のうち、住宅内のすべての部屋を温める全館暖房(太陽熱床暖房)を導入している住宅と、導入していない住宅では、全館暖房を導入している住宅の方が居間とトイレの温度差が生じにくいことがわかりました。
* 平成11年に改訂された断熱基準(次世代省エネ基準)を満たしている住宅

図6 起床時の居間とトイレの室温の関係

図6 起床時の居間とトイレの室温の関係

慶應義塾大学 理工学部 伊香賀俊治教授のコメント

イギリスの英国保健省は、「Cold Winter Plan 2015 for England」*において、9~12℃以下の室温では循環器系疾患リスクが高まり、16℃以下でも呼吸系疾患リスクが高まるとして、居間の昼間最低室温を21℃、寝室の夜間最低室温を18℃に保つことを英国民に推奨しています。また、住宅の断熱性能強化と適切な暖房に国家予算をかけた方が、それ以上の疾病・介護予算軽減につながるとして、住環境改善による疾病・介護予防政策を推進しています。

今回の調査によって、夜間の寝室室温の平均が12℃以下になっている住宅が多いことが示されました。同様の結果は、他の多くの調査によっても裏付けられており、「寝具の中は暖かいので、寝室は寒くても良い」という誤った考え方を改める上でも貴重な調査報告となっていると思います。

*1 https://www.gov.uk/government/organisations/public-health-england

自治医科大学 循環器内科学部門 苅尾七臣教授のコメント

心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の発症には明確な季節変動があり、冬季は夏季に比べて1.5倍ほど増加します。このように冬季に循環器疾患の発症リスクが高まる要因の一つが、気温の低下で血圧が著しく上昇する高血圧、“気温感受性高血圧”です*1。

今回の共同研究において、早朝の気温低下に加え、同じ住居内においても室間での気温差が大きいこと、また、就寝時の室温の低下によって冬季の早朝血圧が上昇することが初めて示されました。過去実施している20,000名を超える高血圧患者の研究でも、早朝高血圧が循環器疾患のリスクになることが明らかとなっています*2。ここから、循環器疾患の予防には、24時間を通じた室温の変化に加え、各部屋間の室温差も最小限となる住環境づくりが大切であると考えます。

*1 Karioら、Hypertension 2015
*2 Karioら、Hypertension 2014
PDF版をみる

「住まいと健康」に関する共同調査 第1弾報告
室温が家庭血圧に与える影響についての実証調査を実施

-足元付近の室温が10℃低下することにより、血圧は平均9mmHg上昇-

OMソーラー株式会社(本社所在地:静岡県浜松市、代表取締役社長:飯田祥久)と、慶應義塾大学 理工学部(伊香賀俊治教授)、自治医科大学 循環器内科学部門(苅尾七臣教授)、オムロン ヘルスケア株式会社(本社所在地:京都府向日市、代表取締役社長:荻野 勲)は、「住まいと健康」についての共同研究を実施し、足元付近の室温が家庭血圧に与える影響についての実証調査の結果をまとめました。

脳卒中や心筋梗塞など、高血圧を主な危険因子とする循環器疾患による住宅内での死亡者数は、冬季は夏季の2倍になることが明らかにされています*1。気温の変化が血圧上昇のリスクを高めることから、近年、住宅内温熱環境と血圧についての研究が行われていますが、従来の調査では床から1m付近の室温が家庭血圧に与える影響についての検証が中心となっていました。

本研究では、床からの高さによる室温の違いに着目し、冬季の実生活場面での床から0.1m(足元)、1.1m(着席時の頭の高さ)、1.7m(起立時の頭の高さ)の室温と家庭血圧の実測調査を実施しました。その結果、断熱性能の高い住宅では床上1.1mと床上0.1mの温度差が1℃程度と小さいのに対して、断熱性能が低い住宅では暖房器具(床暖房を除く)によって床上1.1mの室温を20℃に暖めても、足元付近の室温は10℃と低温の住宅があるなど、平均では15℃と低温であり、5℃の温度差が見られました。

また、断熱性能が低い住宅の居住者(50歳以上)の平均血圧は128.8mmHgであったのに対し、断熱性能が高い住宅の居住者(50歳以上)では、平均血圧は121.0mmHgと低くなっており、住環境による健康への影響が示唆される結果を得ることができました。

これにより、血圧の上昇を抑えるためには、部屋全体の温度管理よりも足元を冷やさないための温度管理の工夫が大切であることがわかります。

今後、断熱性能が低い住宅から高い住宅に転居した人を対象とした追跡調査の実施など共同研究を進め、特に足元付近の温度に着目して室温と血圧をはじめとする健康への影響度を調べ、より安心して健康に住まうことができる住環境の検証を続けていきます。

*1:羽山広文ら、住環境の変化が身体へ与える影響の実態把握 その1 全国の疾患発生と住宅の建築時期・構造解析、日本建築学会北海道支部研究報告集、No.84, pp.539-542, 2011

今回ご報告する調査の概要、結果の詳細は次のとおりです。

実証調査の概要

調査対象 首都圏に在住の35~74歳の男女180名(100世帯*)
*断熱性能が低い住宅への居住世帯43世帯+高断熱住宅への居住世帯28世帯
調査期間 2014年11月~2015年2月のうち、各世帯2週間
測定項目 ○温湿度…居間(高さ0.1m/1.1m/1.7m)において10分間隔の連続測定
○家庭血圧(最高血圧/最低血圧)…居間において起床後/就寝前の1日2回測定
○床表面温度(2015年2月のみ実施、調査対象:男女29名・17世帯)…居間、トイレ、脱衣所において、10分間隔の連続測定
有効サンプル 137名(86世帯)

本実証調査から得られた結果

1. 断熱性能の低い住宅では、室内の上下温度差が大きい

床からの高さが1.1m(着席時の頭の高さ)と10cm(足元付近)の朝(起床後の血圧測定時)の平均室温を比較すると、断熱性能の高い住宅では温度差は0.5~2℃程度でしたが、断熱性能の低い住宅では1.1mでの室温が20℃でも足元付近の室温は約10℃の住宅が存在するなど、平均では約15℃となり、5℃の温度差が見られました。

1. 断熱性能の低い住宅では、室内の上下温度差が大きい

2. 足元付近の室温が10℃低下すると、最高血圧は平均9mmHg上昇

断熱性能が低い家での、朝、起床後に測定した最高血圧値と、測定時の室温の関係を分析したところ、床からの高さが1.1mの室温が10℃低下すると血圧は平均5mmHg上昇するのに対し、床から10cmの足元付近の室温が10℃低下したときには血圧は平均9mmHg上昇。着席時の頭の高さの室温が冷えるよりも、足元が冷える方がより血圧が上昇する傾向が見られました。

2. 足元付近の室温が10℃低下すると、最高血圧は平均9mmHg上昇
図2 居間室温と収縮期血圧(起床後)の関係
(50歳以上, 断熱性能が低い住宅の居住者)

<床からの高さ1.1mの室温と血圧の関係>

<床からの高さ1.1mの室温と血圧の関係>

<足元付近の室温と血圧の関係>

<足元付近の室温と血圧の関係>

3. 断熱性能が低い家の居住者の方が、断熱性能が高い家の居住者よりも平均血圧が高い傾向

朝、起床後に測定した最高血圧の値を比較すると、断熱性能が低い家の居住者(50歳以上)の平均値が128.8mmHgであったのに対し、断熱性能が高い家の居住者(50歳以上)の平均値は121.0mmHgと、7.8mmHgの差が見られました。このことから、断熱性能を向上させて室温を高く維持することで、血圧の上昇を抑制することができると考えられます。

3. 断熱性能が低い家の居住者の方が、断熱性能が高い家の居住者よりも平均血圧が高い傾向

慶應義塾大学 伊香賀俊治先生のコメント

全国5,200万戸の住宅のうち、省エネルギー法で定められた断熱性能を満たす住宅は5%に過ぎません(2012年、国土交通省調べ)。今回の共同調査の測定対象住宅の多くも断熱性能は充分ではなく、冬の朝の室温が3℃まで低下している住宅もありました。また、暖房によって床上1.1mの室温が20℃程度となっていても、足元の室温は平均でも15℃にしかなっていないということがわかりました。しかし、断熱性能が良く、足元から暖める床暖房を採用している住宅では、上下温度差のない良好な住環境が実現されていること、そしてそれによって断熱性能が低い家に比べて血圧の上昇を抑制することができているという貴重なデータが得られました。

今後、共同研究を進める中で、断熱性能が低い住宅から良い住宅に転居したことによる"転居前後比較"を行い、さらに貴重な知見を提示できる予定です。

自治医科大学 苅尾七臣先生のコメント

冬季には、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患の発症数が約2倍に増加します。その要因の一つは気温の変化の影響であり、私たちは10℃の気温変化で血圧が10mmHg以上変動する病態を「気温感受性高血圧」と名付けました(Kario. Hypertension 2015)。気温感受性高血圧は、冬季の循環器疾患の増大だけでなく、夏季の過度の血圧低下のリスクとなります。

今回、建築・住居の専門家を含んだ産学共同研究によって、室内の高さによる室温の違いと血圧の変化の関係が初めて明らかにされました。今回明らかになった「足元付近の温度が10℃下がると、血圧は約9mmHg上昇する」という結果は、言い換えると「足元付近の温度管理に気をつけると、気温感受性高血圧の発症リスクを抑えることができる」ということであり、より的確な住まい環境の改善により、より有効に循環器リスクが予防できることを示す貴重なエビデンスとなります。

PDF版をみる

記事に関するお問い合わせはこちらから
お問い合わせ