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SPECIAL

よりよい眠りの家づくり
“リズムから考える快眠環境”

温度

睡眠

PROFILE

岩田有史(いわた・ありちか)

株式会社イワタ 代表取締役。1983年、家業である京都の老舗寝具メーカー(創業1830年)に入社。1988年より独学で睡眠の研究を始める。その後、日本を代表する睡眠の研究者らに師事し、睡眠研究機関と産業を繋ぐ橋渡し役として活躍する。眠りのメカニズムに裏付けられた見識は、ヒット商品を数多く世に送り出す。直営の寝具御誂専門店IWATAの顧客には、各界の著名人やエグゼクティブが名を連ねており、良質な睡眠を支えている。著書に「なぜ一流の人はみな、『眠り』にこだわるのか?」(すばる舎)等。

鍛治恵(かじ・めぐみ)

NPO法人睡眠文化研究会事務局長。1989年ロフテー株式会社入社後、快眠スタジオにて睡眠文化の調査研究業務に従事。1999年睡眠文化研究所の設立にともない研究所に異動後、主任研究員を経て2009年まで同所長。睡眠文化調査研究や睡眠文化フォーラムなどのコーディネートを行う。2009年ロフテー株式会社を退社しフリーに。同年10月から独立した活動を開始し、NPO睡眠文化研究会を立ち上げる。

人生に占める割合が4分の一とも3分の一とも言われる睡眠。誰でも毎日とっている睡眠。よりよい眠りのために、住まいづくりの中で、睡眠の環境をどのように整えればよいのでしょうか。眠りのメカニズムと寝具の選び方、また夏の快眠のためのしつらいについて、ご自身でも睡眠関連書籍を多数執筆されており、京都に本社を構える寝具メーカーの株式会社イワタ・岩田有史代表取締役社長にNPO法人睡眠文化研究会・鍛治恵がお話を伺いました。

眠りには「リズム」がある “体温リズムが司る眠り”

鍛治恵(以下鍛治):ここ数年、睡眠を通して健康になろうという傾向が高まってきているように思うのですが、健康の柱として「運動」「食事」そして「睡眠」の3つがありますね。運動や食事に関しては、自分の意思でいろいろ考えてできることがわかると思いますが睡眠についてはいかがでしょう。

岩田有史(岩田):自分の意志で睡眠そのものをコントロールするのはまず無理で、睡眠の前段階とか「睡眠環境」つまり眠りを妨げる環境要因をコントロールすることが必要です。

鍛治:眠りを妨げる要因を知ってコントロールすることは、どうやって眠くなるのか、眠りの仕組みを知ることとつながりそうですね。教えていただけますか?

岩田:「眠り」には、大きく2つの仕組み(原理)があります。
A,夜になると眠りやすくなり、朝になると目が覚めやすくなる
B,目が覚めてから起き続けている時間が長ければ長いほど、眠りに入りやすくなる

2つの仕組みが調整しあって眠くなるんです。Bは、活動するとお腹が空く、食欲が出るというのと似ていますが、「睡眠欲」とか「睡眠圧」とも言う圧力がぐーっと高まってくるのです。Bの仕組みだけなら、忙しい時はまとめて長く起きて働いて、まとめて眠りたいと思いますが、残念ながらそうはできない仕組みになっているのは、Aの「リズム」という仕組みが働くからです。

「地球上の生き物すべての営みに~」といっても過言ではないくらいに、何らか「リズム」や「周期」があって、心拍のような短いものから一年単位の長いものまでいろいろありますが、その一つに約一日という周期があります。睡眠はその約一日の周期で行われているのです。

私たちの体の中には自発的なリズムがありますが、その他に、地球という星の上に生きている、それによって環境に同調しようという働きが出てくるのです。東洋医学の考えでは、体のことを「小宇宙」、体のそとの環境を「大宇宙」といって、そのリズムが同調していることが健康的な状態と考えますよね。そういう意味でも、体のリズムに自然界のリズムを同調・同期させるというのは、一つの古典的な健康観だと思います。

鍛治:リズムと睡眠というのは普段なかなか意識しづらいかもしれませんが、睡眠を考える上でとても重要なことなんですね。

岩田:そうですね。実は、その日眠ろうとして寝室に入る時、その時点でよりよい睡眠のためにできることは半分くらい終わっています。大切なのは、一日の活動を通して眠りが決まってくるということです。別の言い方をすれば、よく活動できればよく眠れるし、よく眠ればよく活動できるというように、相関関係があるのです。活動量が低いとそれなりの眠りになる。リズムにはメリハリが必要なんですね。

意識していないと思いますが、体温も一日の中で明確な周期性を持って上がったり下がったりしています。体温が上がっていく時は目が覚めやすく、体温が下がってくる時間帯は眠りやすい時間帯です。一日の中で、夕方から宵の口が体温は一番高いのです。小さいと感じるかもしれませんが、一日の間で約1℃の上下があると考えられています。一番体温が高い時間帯から体温が少し下がってくると、体は眠る準備を整えてきます。眠るとさらに体温が下がるというリズムです。

鍛治:体が眠る準備をするタイミングを知ることができたらいいですね。体温リズムの変化は感じることができるのでしょうか?

岩田:今お話ししているのは、体の表面の温度ではなく、体の奥の体温「深部体温(*1)」のことなのですが「深部体温」が下がる時に、眠る直前には手足が暖かくなってきます。手足から放熱をすることで体内の温度が下がりやすくなるのです。赤ちゃんが夜ぐずってきて手足を触るとホカホカしているのは、眠る準備をしていることを表しているのですね。赤ちゃんだけではなく大人も同じです。末端が冷たいままだと「放熱」という眠りの準備ができないので、手足を暖めることは眠る前準備になります。

*1:深部体温・・・直腸温や内臓温とも呼ばれる体の深部の温度。

四季のリズムと快眠 “夏の温度と湿度のコントロール”

鍛治:一日のリズムで睡眠も営まれているということですが、さらに四季の変化も睡眠にとっては影響がありますか?

岩田:部屋の温度が上がると眠りに影響し継続した眠りがとりにくいということも研究でわかっています。一般的に、室温は28℃を超えると眠りが浅くなると言われています。逆に寒過ぎる場合は、通常の睡眠環境では布団によって眠りそのものの質はそれほど影響がないのですが、問題なのは布団の中の温度が30℃以上ありますので、布団から出た時に室内があまりに低いといわゆるヒートショックを起こすことで健康リスクに繋がります。寝室の温度は冬もある程度キープしておくことが大切です。

鍛治:快眠につながる、夏の睡眠環境をどのようにつくって行けばよいのか、寝ている間の体の状態も含めて、少し詳しく教えていただけますか?

岩田:室温だけでコントロールすることは難しいですし、かといって寝具だけ考えて室温はどうでもよいということでもない。最終的には、布団の中の温度と湿度が眠りに直接的に影響しているようですので、やはり寝具と寝室両方の環境を考えて眠りやすい環境を整えるということになるのではないでしょうか。

布団の中の温度と湿度を「寝床内(しんしょうない)気候」と呼んで、温度は33℃±1℃、湿度は50%前後が、快適に眠れる数値だと言われています。33℃というと意外に高いと感じられるかもしれませんが、就寝後は胴体部分の皮膚の表面温度は35℃前後になるので、布団の中はそれよりも少し低い温度が快適です。体温より低いということで、体から熱を少しずつ逃す、放熱できる温度ということなのです。もしも、布団の中が皮膚の表面温度よりも高ければ汗だくの状態になってしまいます。そうなると「発汗」しか体温調整の方法がなくなるので、布団の中は蒸れて眠りにくくなってしまいます。

体温調節の基本メカニズムのうち、「輻射(ふくしゃ)」「伝導」「対流」「発汗」の4つが熱放散のしくみで、暑い環境では体の外に熱を逃がしたり、逆に寒い時は震えを起こして体が熱をつくり出したりして、人間の体の中の温度が急激に変化をしないように調整しているわけです。寝床内の温度が33℃というのは、皮膚表面温度が35℃を超えてしまうと放熱できないし対流も起こらない。発汗しか手段が無くなって来て、ものすごく汗をかく。かといって、布団の中が28℃ですと今度は寒すぎて震えが起こる。この5℃前後という幅の中で細かい変化が起こっているのです。日常生活で体温が35℃の平熱が普段より上がって37℃になると深刻な状態になっているのに比べて、室内温度については若干無頓着かもしれないですね。

鍛治:そうすると、よくコップ一杯分の汗をかくと言いますが、夏は2倍くらいかくと考えると、かなりの水分が体から外に出ているのですね。

岩田:夏は背中から蒸れて布団の中の湿度が上がります。相対湿度が90%を超えてしまうという研究結果もあって、そうなると汗だくの状態です。熱がこもって背中も蒸れた状態になると、体は熱と湿気を逃がして換気するために、無意識に寝返り(通常一晩に20~30回)を起こします。時には寝返りが冬の2~3倍になるケースもあります。必要な寝返りを極端に超えるような状態では、睡眠が阻害されていることが考えられます。

鍛治:汗をかくとか寝返りをうつとか、睡眠中に無意識のうちにも体はいろいろ変化をしているとなると、パジャマや寝具の素材の具体的な選び方は睡眠にとって重要ですね。

岩田:基本的に、私たちは外の環境を寝具で調節しています。夏は部屋の温度が高いので、保温力がある素材だと暑くて眠れなくなってきます。背中の湿度の軽減が快眠を実現するポイントになるでしょう。素材として麻は熱伝導性(*2)がよくて涼しく感じるということと、吸放湿性(*3)が良くて蒸れにくいという利点があります。木綿に比べて乾くスピードが早いですから、夏のシーツや敷きパッドに選ぶとよいですね。

鍛治:イワタさんの商品の素材に対するこだわりも、温度に関するポイントがあるそうですね。

岩田:日本には四季があるので、それに応じて、自然素材の特性を見極めながら使い分けているのですが、冬なら日本より厳しい環境の素材の毛を使い、夏は日本より暑い環境の地域の素材を使うようにと考えています。

鍛治:夏の快眠のために、素材以外でできる工夫はありますか?

岩田:まずは、昼間に部屋に熱を溜め込まない工夫をしておくということが、夜の睡眠にとってポイントになりますね。日中、建物自体が熱を持って、誰もいない寝室の温度が上がっていてしまうと、夜になってエアコンを入れてもすぐには効かないと思います。窓の外に熱を遮るものがあるとよいですね。室内のカーテンより、簾とかよしずをガラス窓の外側に設置して遮光や遮熱をする方が効果的ですね。また、夏は汗もかくので布団も頻繁に干したくなりますが、あまり長時間干していると、布団が熱を吸収してしまって使う時には暑くて眠れなくなります。昼間に一時間程度で済ませるのがコツです。

睡眠時間は日照時間に影響を受けて、夏は冬よりも短くなります。そもそも動物であるヒトも自然界のリズムに呼応したリズムを刻んでいます。反対に冬や日照時間が短く夜が長いので、それに影響されて睡眠時間は長くなるのは普通です。それは自然の変化の範囲内として、それに則した対応をすればよいのではないでしょうか。

*2 熱伝導性・・・放射や対流などによらずに物体の高温部から低温部に熱が移動する現象。
*3 吸放湿性・・・繊維などの 水分を吸収・吸着、あるいは放出する性質。

加齢と快眠 “生活習慣でカバーするよりよい睡眠環境”

鍛治:個人的にも感じることですが、季節だけでなく、年齢を重ねると睡眠も変わってきますが、それについてはどのように考えればよいでしょうか?

岩田:一人の人の変化としても、若い時は、眠り続ける力と深く眠れる力があるのですが、年齢ととともに加齢変化としてそれらが衰えてくるのは自然の流れです。若い時より食事の量は減って脂っこい食事が苦手になったり、お酒の量も減ったりなど、食習慣もかわりますね。また、体力の低下変化もあるのは当たりまえだと思いますが、睡眠だけ若い頃と同じにという「幻想」を抱くのは難しい話ではないでしょうか。眠る力が落ちてくるのは自然な体の変化の一つなので、その分眠りやすい環境をつくっていく、環境でカバーしていくことが大事になってくるのではないでしょうか。若い時は、ある程度暑くても寒くても、固いベッドでも、眠たかったら眠れるんです。年齢を重ねると、若い頃は眠りの質に影響を与えなかったちょっとした音や温度変化、光などで眠りが中断されるというケースが多くなってきます。それは加齢変化として受けとめて、寝室や寝床内環境を見直して工夫していくきっかけにした方がよいでしょう。

30代、40代前半くらいだと、人によっては眠りにトラブルも感じていないと思う人もいるかもしれませんが、睡眠環境が睡眠に全く影響がないということはないと思います。今はまだ眠る力があるので自覚していないだけで、翌日のパフォーマンスに影響している可能性があります。徐々に加齢変化は進んでいきますので、寝具や寝室をよりよい状態にしてみることは、決して眠れない人だけに必要なことではないのではないでしょうか。

鍛治:最後に、健康な睡眠につながる住まいづくりについて、どのようにお考えですか?

岩田:よい眠りのための家、と言うと寝室のことにばかり目が向きがちですが、本来は家族がその家で生活しているうちに健康的なリズムが保てる、あるいは身についてくる、そういう家が、結果的にはよい眠りがとれる住宅ではないのかなと思います。

朝起きてから夜布団に入るまでの生活リズムも大事で、その延長線上に夜の睡眠があります。次の日はそのまた続きですから、24時間の流れを通して、自然界のリズムと同調していけるような家があったらよいと思うのです。眠りだけよくしようとしても難しいのではないでしょうか。

関連資料
> 研究調査レポート「睡眠リズムと体温リズムの関係」
文:NPO法人睡眠文化研究会 事務局長 鍛治恵
監修:豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 教授 都築和代

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