土曜建築学校・特別講座
「パッシブデザインの未来を語る」

Volume 03

住む人や利用する人のためのデザイン

住む人や利用する人のためのデザイン

最終回のテーマは「シミュレーションや技術の進化は、パッシブデザインに何をもたらすのか」ということで、シミュレーションを使いこなしながら環境建築の設計に取り組まれている建築家三名の講演と土曜建築学校・校長の野沢正光氏が加わったパネルディスカッションが行われました。
講演ではSUEP. を主宰している建築家の末光弘和氏から「デザインとエンジニアリングの横断」と題して、日射取得や通風利用など自然と応答するための建築のあり方や実例を紹介してくださいました。
環境建築だからといって、環境性能に走り過ぎるのは本末転倒であり、そこに住む人や利用する人を第一に考えなくてはいけない、シミュレーションはその着地点を探る行為でもあるということを語ってくださいました。

「心地よさ」や「全体の調和」

「心地よさ」や「全体の調和」

続いて伊礼智氏からは「性能の先の心地よさを考える」をテーマに、ご自身の設計の考え方やプロセス、実例をご紹介いただき、目に見えない「心地よさ」の価値についてあらためて解説してくださいました。
また、「ホームズ君」を開発されているインテグラル社の藤間明美氏より、伊礼氏設計の住宅をシミュレーションで評価し直した結果について報告がなされ、シミュレーションの手軽な設計ツールとしての側面も紹介されました。
講演最後は東工大助教で建築家の川島範久氏より「自然と繋がるDelightful な建築へ」と題して、自身の建築実例をもとに、設計における考察のプロセスについて解説が行われ、エネルギーと周辺環境への影響、住みやすさを含めた全体を調和させることの重要性について語りました。講演後半では直近に開催されたJIA 徳島大会の報告をかねて集落の地形的条件と成り立ちに関する考察についてお話しいただき、自然発生的な集落の形成と環境との応答関係はパッシブデザインを語る上で大変興味深いものでした。

「心地よさ」や「全体の調和」「心地よさ」や「全体の調和」

建築とは何か

後半はパネルディスカッションに先立ち、「話題提供」という位置付けで、川島氏より第一回から最終回までの議論の流れと概要について簡単に報告が行われました。
「吉村順三や奥村昭雄が今生きていたら何をしただろうか」という問い掛けからはじまったシンポジウムですが、最終回となる今回は、「パッシブデザインの未来を語る」という総括的な議論が行われました。
冒頭では野沢氏から三者の講演を聴いての感想が述べられ、シミュレーションにより検討範囲がより広域化、多岐化されつつある中で、あらためて建築家の仕事の量や範囲の増大と、建築家以外の建築に関する専門家の不足について指摘されました。また、失敗が許されない社会背景や社会的存在としての建築と個人所有としての建築の制度のあり方の限界についても触れ、議論の中心は「環境と人との調和」など、建築に関わる要素や社会的課題の統合の仕方、「建築とは何か」といった根本的な問いへと向かいました。

「心地よさ」や「全体の調和」

「最適化」は何を生む?

ZEH など、住まいのゼロエネ化が重要な課題となっている中、長く「閉じていく」一方だった建築を、シミュレーションや技術の進化は「開いていく」「応答していく」ことへ向かわせる、性能を伴いながらも多様な建築デザインを許容していく「建築の開放」という側面を持っていると同時に、シミュレーションの最適化という側面がもたらす建築の「画一化」「同質化」など、真逆の反応をも包含しているという認識も共有することができました。あくまでもシミュレーションはツールであって、そもそもシミュレーションが有しているパラメータは大きな自然のごく一部です。
問われるのは建築家や設計者自身であって、その人の建築に対する姿勢なのかもしれません。シミュレーションが進化した今だからこそ、「デザインのあり方」が問われているのかもしれません。

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