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愛知県海部郡・伊藤さん
2003年6月築
小さな家のシンプルな暮らし。
自然とつながりあって、人と豊かにつながりあって、
大きな暮らしにふくらんでいきます。
設計ファイル
将来の家族形態にフレキシブルに対応する開放的な家。
1階から3階まで、ほぼ10坪の空間を縦に重ねた伊藤さんのフォルクスの家。
今はまだ子どもたちが小さいので、みんなで3階を寝室にし、2階を子どもたちの勉強部屋と遊び場、そして1階をリビングダイニングと棲み分けています。
いずれ子どもたちが成長することで棲み分け区分の変更が予想されますが、こうした開放的な家だからこその融通性により、フレキシブルな対応が可能となっています。
吹き抜け部分に設けられた階段は、下から5段目までが収納になっていて、子どもたちはこの階段をジャンプ台にしたり、机にしたり、またここから庭を眺めたりと、階段以上の利用方法を楽しんでいます。吹き抜けがあることによって床下の暖気の通り道になり、家族の気配も常に感じられるので安心できるそうです。
【左】吹き抜けに設けられた階段上方から見た居間。空間が縦に伸びているのが感じられる。
【右】2階の仕切りのない広い子ども部屋は子どもたちのお気に入りの場所。お友だちにも人気。
建物概要
- 在来木造3階建て
- 敷地面積:451.87m2
- 延床面積:104.35m2
(1F:36.00m2、2F:32.35m2、3F:36.00m2)
家づくりと暮らし
フォルクスは感覚的にぴったりとくるし、身の丈にもあった家。
この家に住むようになって子どもたちは外遊びの機会が増えたという。
「同じマンションに住んでいても、住民同士で話をすることはほとんどなく、子どもたちは親がついていなければ、外へ遊びに行くこともありませんでした」。
名古屋市内の高層マンションにお住まいだった伊藤さんご夫妻は、そんな都会での人間関係や子どもたちの様子に、「これでいいのだろうか」という思いを抱いていたといいます。
「子どもたちを地面にもっと触れさせたい。いろいろな人とも触れ合いながら育てたい」。そうした思いが、伊藤さんの家づくりへの第一歩となりました。「家を建てよう」。そう考え始めた伊藤さん。その目に止まったのは、アレルギーを専門とする医師によって書かれた、『お医者さんが書いた住まいの本』(海象社)という本でした。

日当たりのいい開放的なリビング。
「人と触れ合いながら暮らしたい」と望んだ伊藤さんらしい暮らしが広がる。
アレルギー体質だった、というわけではありません。しかし世間ではシックハウスなど何かと不安な要素が取り沙汰されていることもあり、「せっかく家を建てるのだから、家づくりの参考になれば」、とその本に興味を抱いたのです。
すると、本の内容から『太陽を利用して床暖房をしながら同時に換気もし、換気をすることによってアレルギー症状の原因のひとつを外に排出する』OMソーラーというシステムがあることを知ります。
「へぇ、こういう家があるんだ」と興味を抱いた伊藤さん。「もっとOMソーラーのことを知りたい」と資料を取り寄せます。そして送られてきた資料を何度も読み返すうちに、ますます興味は深まり、さらに実際にOMの家を見たいと見学会にも足を運びます。何棟ものOMの家を体感し、納得を重ねていくうちに、本を読むまでOMを知らなかった伊藤さんも、ついには「家を建てるならOMソーラーで」、とまで気持ちを固めていくのです。
シンプルな玄関。シンプルだからこそ雑然とならないよう気を配る。
そんな伊藤さんが選択したのは、OMソーラーの中でもフォルクスAというシステム住宅。構造や内装をすっぴんの素地仕上げとし、余分なものは削ぎ落とした、実質価値を大切にするOMソーラーの家です。
「最初に木目や節を見た時は正直言ってびっくりしましたけど、二度、三度見ているうちに見慣れて気にならなくなりました。かえって壁紙で覆うよりも気持ちがいいよねって。いろいろOMの家を見て行く中で、フォルクスAはまず感覚的にぴったりくるものがあったんです。それと経済的にも身の丈にあった家だったので、建てるならフォルクスで、と決めました」。
この家は「人や自然と触れ合いたい」という私たちの思いを表してくれています。
伊藤さんがフォルクスAを建てたのは、愛知県の西部、住宅と畑が混在するのどかな地域です。道路に挟まれた間口9メートル、奥行50メートルと南北に細長い敷地の中ほどに、2003年6月、10坪の空間を縦に3層重ね、10寸勾配の屋根を乗せたフォルクスAが完成しました。
間口と奥行が6メートル×6メートルというフォルクスA・606の伊藤さんの家。平面的に見ればコンパクトともいえますが、吹き抜けを含む3階まで縦に伸びた空間と、南北の大きな開口部からデッキを仲立ちに、外へと視線が伸びていきます。垂直と水平方向に空間の広がりがあることから、床面積以上の広さが感じられます。
また、道路から家まで続く長いアプローチには、植栽に加えて季節を彩る草花が植えられ、家の表情をより明るく豊かなものにしています。
将来は子ども部屋になる予定の3階。現在は家族みんなの寝室に。
南北に設けられた大きな掃き出し窓は、「外から丸見えじゃない?」と言われることもあるそうですが、「近所の人しか通らないし、逆に通られる方が気を遣われるみたいですよ」と、全く気にしていないとのこと。それよりも、こうして開放的な暮らしをしていることによって、「ご近所の方が気さくに接してくれるのが嬉しい」、と伊藤さん。
当初は家の北側の空き地に畑でもつくって野菜を育てよう、と考えていましたが、住んでみると隣のおばあちゃんをはじめ、ご近所の皆さんがいろいろな野菜を届けてくれるのだとか。その好意が嬉しくて、とうとう「畑づくりは断念しました(笑)」というほど。「人と触れ合いたい」と家を建てた伊藤さんにとっては、こうした暮らしこそが望んでいたことだというのです。
「子どもたちはスーパーで買った野菜よりも、いただいた野菜の方が美味しいらしく、初めて見る野菜でもパクパク食べるんです。子どもたちはどうやってその野菜を育てているのかを自分の目で見ていますし、つくってくれた人の顔も分かっているからきっと、より美味しいと感じるのでしょうね」と、目を細めます。
マンションにいた頃は家の中にいることが多かった子どもたちも、この家で暮らすようになってから、お友だちをたくさん連れてきたり一緒に遊びに出かけたり、とても活発になったといいます。ご近所のやさしい目に見守られているという安心感があるからなのでしょうか、子どもたちも世界を少しずつ広げているようです。
1階東側の洗面台には、身近な素材を使い、洗練された飾りつけがされている。
そんな子どもたちの様子や、ご近所との触れ合いの中での暮らしについて、伊藤さんは今、こう感じているといいます。
「ここでもし私たちが都会のような閉鎖的な暮らしをしていたなら、きっとこの土地に馴染めないで、孤立していただろうと思います。この家は見てもらえばすぐに分かるように開放的な家ですから、“人や自然と触れ合いながら暮らしたい”という私達の思いを、周囲にも伝えてくれています」。
人が一人では生きられないように、家も自然や周囲との関わり合いの中で存在し、関わり合いの中で豊かになっていきます。伊藤さんのフォルクスの家は、こんなふうに暮らしたいという伊藤さんの生き方や考え方までも、さりげなく、そしてのびのびと表現しているのです。
