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三重県四日市市・藤本さん

2000年5月築

太陽に向かい、三重の気候風土に育まれた木で家をつくりました。

設計ファイル

季節に応じて使い分けることができる五重構造の開口部。

写真:三重県四日市市・藤本邸

敷地に対して南に振って建てられている藤本さんのOMソーラーの家。日当たりのいい南のテラスに面した開口部は、外から、雨戸・網戸・ガラス戸・葦簾張りの戸・障子の、五重の戸が組み込まれており、季節やその日のお天気に合わせて使い分けることができるようになっています。葦簾張りの戸は、市販の葦簾を利用して、奥様が大工さんに頼んで造ってもらったという、特注のアイデア品です。

ふんだんに用いられている木は、桧、杉、楢、欅などの様々な種類の県産材。堅い木、柔らかい木と、木の特質を生かして、適材適所に使われています。

また壁は、シラスを原料とする薩摩中霧島壁で、調湿作用のある自然素材を用いています。

写真:南面テラス 写真:五重の戸 写真:吹き抜け
【左】太陽の恵みが燦燦と降り注ぐ南面テラス。深い軒が室内への夏の陽射しを遮り、冬の陽射しを取り入れてくれる。
【中】五重の戸が組み込まれた南の開口部。季節や天候に応じて異なった建具を簡単に引き出すことができる。
【右】 吹き抜けに面して障子戸が設けられている子ども室。壁には、シラスを原料とし調湿作用のある薩摩中霧島壁を使用。

建物概要


三重県四日市市・藤本さんの家平面図(クリックで拡大:70KB)

家づくりと暮らし

「木の家で、しかも暖かい」、そんな家が欲しかった。

石油化学工業を中心とした工業都市、三重県四日市市。市中心部の北東に位置する閑静な住宅地の一角に建てられた藤本さんの家は、付近の家々が道なりに建てられているのに比べ、一見して違った表情を見せています。それは敷地に対し斜めに建てられていること。張り出したテラスには、惜しみなく太陽が降り注ぐその様子から、藤本さんの家の屋根面が向いている方が南の方向なのだ、ということをこの家は教えてくれます。

写真:藤本邸外観 道なりに建てられている付近の家々に対して、方向を異にする藤本さんの家の屋根は、太陽に向かいその恵みを取り込んでいる。

藤本さんご夫妻がこの家を建てたのは、2000年の5月。結婚以来アパート住まいをしていた藤本さんご夫妻が本格的に家を建てようと考えはじめたのは、長男が誕生してからのことといいますから、5年ほど前になります。

「私の生まれた家がコンクリート造りで、結露はするし寒いしという家でした。だから、“木の家がいいなぁ”と思っていたんです」という、奥様。一方、ご主人のご実家は木造でしたが、とても寒い家だったそうで、“木の家で、しかも暖かい家がいい”というご夫妻の思いがOMソーラーに結びつくまでに時間はかかりませんでした。

設計は専門家に依頼しようと、知人から紹介された設計事務所を訪ねることに。すると、偶然にもその設計者は、「今度自分の家を建てる時にはOMソーラーの家にしようと思っていた」という方で、たちまち意気投合となりました。さらにお願いしていた工務店とも知り合いだったということも後からわかるなどの偶然も重なり、設計はその方に任せることに。

写真:木のぬくもりを感じられる空間 杉、桧、楢、欅など、三重の地で育った材をたっぷり使って建てられた藤本さんの家。 太陽の光が障子を介してやわらかに差し込む、春近い休日のひととき。

「できるできないはともかくとして、腹一杯希望を出してください」という設計者からの言葉に、思いの丈を伝えた藤本さんご夫妻は、「経済的な部分で断念したことはありますが、ほぼ希望は叶いました」と、1年間重ねた打ち合わせでやっと完成した設計図を思い返されます。

問題は、土地探しでした。共働きをしているご夫妻の生活に便利な場所をと限定すると、なかなか思うような物件が見つかりません。やっと探し当てたこの土地も、あるハウスメーカーの建築条件付きの土地。しかし、「どうしてもOMソーラーが諦めきれない」というご夫妻の熱意に不動産屋さんもとうとう折れ、建築条件付きを外してくれたのだそうです。

夏には、いい風が家の中を通り抜けてくれます。

こうして土地探しに時間がかかった分、家に対する思い入れも膨らんで、特に奥様の熱心さは、「もういい加減にしたら」とご主人が呆れるほどだったとか。「会社が休みの土日しか身体が空いていないので」と、奥様は、設計者や工務店との打ち合わせを自分でテキパキと取り決め、奥様を先頭に家づくりは進められていきました。

建築中も出勤前にお菓子と温かな飲み物を詰めたポットを現場に届けるなど、大工さんへの心配りも欠かせませんでした。また、ご主人も時間がある時には現場を訪れるなど、共働きをしながらも二人は、毎日しっかりと家づくりを見つめ続けてきました。そうして完成したOMソーラーの家は、桧、杉、楢、欅など、三重県産の木をたっぷりと使い、太陽が温めた空気で床暖房する、希望どおりの「暖かい木の家」となったのです。

照明器具、キッチン、ブラインド、そして造り付の棚に納める籠、これらは「いつもメジャーを持ち歩いていた」という奥様が、納得のいくまで探し出し、価格の交渉をし、選び、集めたものばかりです。

また、欲しかった大きな吹き抜けは、家の中央にダイナミックに設けられ、「友だちを呼んでバーベキューパーティをした時には、子どもを含めて30人近くが集まったんですよ」というほどの包容力。友だちたちはこの開放的な藤本さんの家に集まるのを楽しみにしているのだといいます。

写真:ダイナミックな吹き抜け 写真:間仕切り
【左】ダイナミックに設けられた吹き抜け。縦横に広がりある藤本さんの家の伸びやかな空間で、成長が楽しみな息子さん。
【右】藤本さんの家の内部は、ほとんどがオープン。空間と空間の間仕切りも、すべてドアは使わず、引き戸を用いている。

もちろんOMソーラーの効用も、「以前は枕元にストーブを置いて、朝起きたら手を伸ばしてスイッチを入れ、部屋が暖かくなるまで布団から出られなかったのですが、この家は夜中に起きても全然寒くないんです」と、奥様は大満足。さらに「夏はいい風が家の中を通って行くので、クーラーはとうとう買わずに、ふた夏過ごしてしまいました」と。

じっくりと時間をかける。自分たちがどう生活しどう住まいたいかを突き詰める。妥協することなく土地を探し続ける。設計や工事などプロの手に委ねるべき部分は委ねる。自分たちでできることは積極的に自分たちの力でする。──こうして完成した藤本さんご家族のわが家。その長かった行程を今、「本当に楽しかった」と振り返るご夫妻です。

そして、庭や畑づくりはこれから少しずつ行なうつもり、2階寝室の照明器具も納得のいくものが見つかるまで探し続けるつもり、物置づくりも計画するつもり…と、藤本さんご家族の楽しみは、過去のことではなく、現在もこれからも、進行中の模様です。

写真:収納 写真:キッチン
【左】カウンター下の造り付けの棚には、メジャーを持ち歩いていたという奥様が探し出した籠が、あつらえられたようにぴったりと納まっている。
【右】開口部、木製ブラインド、照明とペンダントの長さ、そしてご主人手作りの棚とそこに置かれた小物たち。それらが一体となってセンスよく演出されていた、台所の一角。

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