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秋田県大館市・小畑さん

1999年12月築

古い家の材が、ご両親が一生懸命磨いていた床柱が、生き続ける家。

設計ファイル

南道路側に物置と車庫を配置し、母屋のプライバシーを保つ。

写真:秋田県大館市・小畑邸

敷地の中で母屋と物置と車庫をどのように配置しようかと考え、道路からの視線を遮るために、物置と車庫を道路側、母屋を北側の奥に配置しました。道路側に物置と車庫を配置するためこだわったことは、「母屋と一体感のあるものに」ということ。色調を合わせ、また「シャッターは無粋だからつけたくない」と、車庫の扉を引き戸の木製格子戸にするなど、外観にも気を配り、建物全体に統一感を持たせています。

また冬は雪の多い地域なので、アプローチには屋根をかけ、壁には明かり取りと風を招き入れるためのガラス戸をはめこみました。アプローチの下には6m3の雨水タンクが設置され、中庭に植えられた樹々に、洗車に、トイレの洗浄にと、利用されています。

写真:玄関 写真:アプローチ 写真:キャットウォーク 写真:3階から吹き抜けを見下ろす
【左・中左】玄関までのアプローチの壁や玄関脇に設けられたガラス戸は、通風と明かり取りを考えた工夫のひとつ。
【中右・右】1階から3階を貫く吹き抜け。2階はスノコ状のキャットウォークが設けられ、太陽熱によって温められた空気が家全体を循環する。

建物概要


秋田県大館市・小畑さんの家・平面図(クリックで拡大:36KB)

家づくりと暮らし

大切な思い出がゴミに変わっていく姿に、「再利用可能な材は使おう」と思った

高校で社会科の教師を務める小畑さん。授業の中では環境問題を取り扱うこともあり、老朽化した自宅の建て替えを考え始めた頃ちょうど目にしたOMソーラーの新聞広告に、「建てるのならこれだ」とすぐに心に決めたといいます。そして家族で見学会に出かけ、ほんのりとした暖かさを体感した帰りの車の中ではもう、「暖かくっていいよね」と、家族みんながすっかりOMを気に入ってしまっていたのだそうです。

小畑さんが住んでいるのは秋田県大館市。秋田県の北部、青森県との県境に接する雪国です。地球温暖化の影響で雪が少なくなったとはいえ、冬には1メートルもの雪に覆われるといいます。

「建て替える前の家はとにかく寒くて、ストーブのある部屋から出られないんです。洗濯物を畳んでも二階へは寒くて行かれないから、洗濯物がいつのまにか山のようになってしまって」と笑いながらお話してくださった奥様。そして寒さもさることながら、もっと深刻な問題がありました。「すごく湿気があって、押入れにカビがいっぱい。掃除をすると、なぜか次の日には必ず体調を崩してしまう……」。カビが原因かどうか定かではありませんが、 旦那さんもずっと鼻炎に悩まされ続け、二人の子どもさんたちも気管支が弱く、年中風邪をひいていたといいます。

写真:外観 写真:屋根のあるアプローチ
【左】南側道路から見た小畑さんの家外観。手前に物置と格子戸のある車庫、中庭を挟んで奥に、木造3階建ての母屋が建つ。
【右】柱・梁に転用材を使った屋根のあるアプローチ。地下には6m3の雨水タンクが埋設されている。

昭和30年頃に小畑さんのご両親が建てられたという以前の家は、お母さんの弟さんが営林署に勤めておられた関係で、材木はみな弟さんが調達して造られたものでした。お母さんはその家で駄菓子屋を営んでいましたが、昭和50年頃に店をたたみ、それを機に二階建てに改築、そこで 小畑さんご夫婦は暮らしていました。そして「子どもたちも大きくなってきて、そろそろ自分の部屋がほしくなってくる頃だから」と建て替えを決めたのですが、ある時こんな事があったそうです。

写真:リビング 思い出あるご両親の家の材を大切に再活用された、小畑さんご家族のOMソーラーの家。ご夫妻が座っているテーブルも、古い床の間の地板を材料に造られた。

「古くなった箪笥を処分しようと清掃局にお願いしたら、職員の方が私達の目の前で箪笥を清掃車に放り込んだんです。鉄の爪みたいなものでバリバリって壊してしまって……もう恐ろしくて恐ろしくて。身体が固まってしまいました( 奥様)」

大切な思い出がゴミに変わる瞬間を目の当たりにしたご夫婦。老朽化によってあちこち住みにくい点はあったものの、ご両親が建てた大切な思い出のある家です。あの箪笥のように壊されていくのは忍びないと、「いくらかでも使えるものは何とか使えないだろうか」、ご夫婦はそう考えたのです。

そんな二人の思いに応え、古い家の解体は慎重に執り行われました。再利用可能な材は傷んだ部分を削り、穴を塞ぎ、汚れた部分を洗ったり、かんな掛けをしたり──1999年の冬、木造3階建てのOMの家の一部として、再び命を吹き込まれたのでした。

写真:中庭 写真:玄関ホール 写真:リビング
【左】中庭のこれらの植木は、柿木を除きすべて、以前の家の庭にあったものが移植された。
【中】玄関ホール。横の細長い明かり取り窓は、西側道路を通る人の視線をはずし、下方に設けられている。
【右】古い家の材を使った和室と、小畑さんが2週間に1度は床を磨くというリビング。和室は襖によって、独立した部屋にもできる。

ここにいると、両親に守られているような気がして

敷地の南の道路側に物置と車庫、北側に家、間に中庭を挟んで西側に屋根付きアプローチという、逆コの字に配列された小畑さんのOMソーラーの家。物置と車庫、アプローチの柱と梁はすべて解体された家の転用材を使用。物置の扉は以前の家の玄関に使われていたものです。

また、母屋の和室の天井材と床材も古い家のもの。特に床柱は、「子供の頃から床柱は父と母が一生懸命磨いたという話を聞かされていました」と小畑さん。磨きこまれたこの床柱を、ご両親の想いとともに受け継ぐことが出来たと嬉しそう。また、「猫の額ほどだった」という以前の庭に植えられていた植木も、広くなった中庭に植え替えられて、伸び伸びとその根を張り始めています。

写真:和室 写真:寝室
【左】 ご両親の手によって一生懸命磨き込まれた床柱。想いは引き継がれ、新しい家の床の間から、再び小畑さんご家族を見守る。
【右】 3階へは、このご夫妻の寝室にある納戸を通って。

古い家の材を「使えるものは使いたい」と活用するだけでなく、太陽光発電で電力を得たり、雨水を貯めて洗車や水洗トイレに利用したり、また今年の冬を目標に、急勾配の屋根から落ちる雪対策として庭に融雪槽を埋める計画を立て、さらには将来的に風力発電も試してみたい、と、ますます夢を膨らませる 小畑さん。「生徒たちに少し大きい顔をしたいと思いまして(笑)」

写真:雨水利用 アプローチ下にたっぷり貯えられていた雨水。

この家で暮らすようになって1年半。もうカビに悩まされなくても済むこと、なにより家のどこもが同じ暖かさなのが嬉しいという奥様は、「ちょっとキザかもしれませんけど、」とテレながらこう言います。「両親が建てた大切な家の材を捨ててしまわなくて本当に良かった。ここにこうしていると、両親に守られているような気がするんです」

ご両親が床柱を一生懸命に磨いていたように、2週間に1度は床にワックスをかけて丹念に磨いているという小畑さんの姿は、きっと、新しい家に暮らし始めた2人の息子さんの、目に、心に、大切な何かを写し、伝えていくことでしょう。

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