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栃木県宇都宮市・松本さん
2000年3月築
木々が息づき、鳥が歌う。
命が命を育み、明日へとつながっていく。
私たちの家は、自然と寄り添っています。
設計ファイル
家具も同じ素材で造りつけ。統一感を演出。
東西に長く南側の庭に向けて大きな開口部を設けた松本さんのOMの家。内部は地元の無垢の杉材や薩摩中霧島壁など自然素材をふんだんに用い、バリアフリーになっています。
家具はご夫妻がスケッチしたものを大工さんに製作してもらったもので、同じ杉材を使っているので部屋に統一感を与えてくれています。
キッチンと風呂場は南側に日当たりの良い位置に設けています。水周りを南に配置したことについては、実際に暮らしてみるとキッチンも風呂場も明るく、しかも湿りがちな風呂場は乾きが早いと、大変合理的で動線にも無駄のない位置計画だと満足されています。

【左】南に設けられた浴室は日当たりが良く、湿気が少ない。
【右】北側階段部分に設けられた明かり取りの窓。
【左】ご主人がスケッチしたものを大工さんが制作。杉板を使った食器棚。
【右】1階西側に設けられたトイレ。段差のないバリアフリーに。
建物概要
- 在来木造2階建て
- 敷地面積:203.63m2
- 延床面積:111.78m2
(1F:62.10m2、2F:49.68m2)
家づくりと暮らし
自然と呼応する楽しさを教えてくれたOMソーラーの家。
開口部を大きくとった1階リビング。室内にいながら庭の様子を楽しむことができる。
「引越ししてからもなかなか庭のある暮らしに慣れなくて、しばらくは庭に出ることがなかったんですよ。」
松本さんご夫妻は、結婚以来30年近くもの間、転勤を繰り返してきました。見知らぬ土地での暮らしに加え、仮住まいとはいえマンションでの生活は結露やカビに悩まされ続け、快適とは言い難いものでした。そこで心の隙間を埋めるように、お二人はベランダで鉢植えの花を育ててきました。季節ごとに次々と新しい花を買い求め、気がつけば「どこに洗濯物を干しているの」と、驚かれるぐらい鉢植えの花でいっぱいに。水遣りにも苦労するほどだったといいます。
自然素材がふんだんに使われ、「家全体が呼吸しているよう」と松本さん。
そんな松本さんご夫妻が、定年が近づき転勤の心配がなくなったことから、故郷の宇都宮に戻り、念願だった庭付きの家を建てたのは、2000年のことです。
「仮住まいだったし、若かったから我慢できたのでしょうけど、こういう暮らしだけはしたくないと思いながら過ごしてきました」というマンション生活に終止符を打ち、終の棲家として松本さんが選んだのは、OMソーラーの家でした。
「私たちが生まれ育ったのは昔の農家で、冬場はとにかく寒かった」。その経験が「家を建てるなら暖かい家を」との思いにつながり、赴任先の船橋でOMソーラーの広告を見た時からずっと、「いずれ家を建てるならOMの家を」と思い続けてきたといいます。「心地よいと思う暖かさは人それぞれですが、私たちにはOMの日だまりのような気持ちよい暖かさで充分だと思いました。」
屋根に降り注ぐ太陽の熱が「もったいない」と、床暖房やお湯採りに活用し、吹いてくる風の向きを考慮し、周囲の環境を余すことなく家づくりに活かすOMソーラーの家。
動線を考慮したキッチン。流し・調理台の下は掃除がしやすいよう引き出すことが可能。
松本さんの家には無垢の県産材の杉板や、薩摩中霧島壁、月桃紙、備長炭入りの畳など、自然素材がふんだんに使われており、「こういう家に住んでいると、家自体が呼吸をしているという感じがします」と松本さん。その心地よさは以前の暮らしとは比べようもなく、「よく今までああいう暮らしをしてきたなと改めて思います」と振り返ります。
人の手によらない自然の営み、それもまた楽しい。
小鳥、木々や花、人の手によらない自然の営みを教えてくれる松本さんの庭。
OMの家が完成した当初は、庭のある暮らしが始まったことで夢が大きく膨らみました。「白樺の木を植えたい」。植木屋さんにそうお願いしたそうですが、「白樺は山にあってこその白樺です」と植木屋さんに諭されたといいます。そんなエピソードもあり、白樺はともかく、松本さんの庭にはナナカマド、ナツツバキ、ヤマボウシ、コナラなどの木々が植えられ、庭としてのカタチが整えられていきました。
待望の庭が持てたわけですから、さぞや「庭のある暮らし」を満喫されたのかと思えば、意外なことに庭に慣れるのに、しばらく時間がかかったというのです。
「庭に出たくないわけではないけれど、なぜか一歩足が踏み出せなかった」という奥さま。「あまりにマンションでの生活が長かったからでしょうか」と、ライフスタイルが人に及ぼす影響の大きさを、改めて思い知らされます。
けれどもそんな思いをよそに、庭の木々はしっかりと根付き、そこには様々な自然の営みが繰り広げられていました。松本さんの家の南側には、庭を見渡せるほど大きな開口部が設けられており、部屋の中からでも庭の様子が手に取るように分かるのです。
庭で採れたカリンを手に。
「そこにナツツバキの木があるでしょう。よく見ていると冬になる前にもう芽吹く準備をしているんですよ」と、奥さまはいとおしそうに話します。木々は花を咲かせ彩りを楽しませてくれるだけでなく、葉を茂らせて夏は日差しを防ぎ、木陰から涼しい風を運んでくれます。
松本さんご夫婦はお風呂場の前にヘチマを3本植えました。「蔓をよしずにからませて日陰をつくると温度がぐんと下がるんです」。自然を上手に利用しながら四季を過ごしてきた、昔ながらの日本人の知恵を再確認。さらに、「ヘチマの実は化粧水に利用しているんですよ」と、無駄なく木々のいのちを頂いているといいます。
夏に日差しを遮り、室内の温度を下げるのに貢献してくれた葉は、秋になると色づき、落ちた葉は栄養となって土に返り、豊かな土壌を育てます。木々にはメジロをはじめ様々な鳥がやってきて、愛らしい姿で楽しませてくれるそうです。「幹にミカンを刺しておくと、どこで見ているのかしら、すぐに飛んで来てついばんでいるんです」と奥さま。鳥は時に木の実をつついて困ることもありますが、「花の種を運んでくれて、思いがけない花が咲いて驚くことがあるんです」と、人の手によらない自然の営みを教えてくれたりもします。
キャットウオークに置いた観葉植物は日当たりが良いので良いので成長が著しいという。
小さな庭が紡ぎ出す豊かな自然の営み、命の連鎖。いつしか庭が繰り広げる様々な世界に引き込まれ、庭のある暮らしに溶け込んでいた松本さんご夫婦。
「私たちの育った家は藁屋根の木と土とでできた家で、子どもの頃は野山を駆け回るなど自然が身近にあったはず。長い間マンション生活しているうちに、自然に対する感覚を失ってしまっていたことに、この家が気づかせてくれました」。太陽という自然のチカラを積極的に取り入れ、周囲の環境も閉ざすのではなく、応答しながら暮らしを育てるOMソーラーの家。子どもの頃の懐かしい思い出や感覚を蘇らせてくれます。
この家に暮らして6年。「朝の着替えが苦にならないのが嬉しい」と通勤のため朝早く起きなければならないとご主人はいい、「苦手だった冬さえも、今では楽しみになりました」と笑います。初めてOMを知った時、「これだ」と思った直感が正しかったこと、自分たちはこういう暮らしをずっと望んでいたのだということを、今しみじみと味わっています。
【左】ご主人の書斎。家具は造り付けでたくさんの書籍類もすっきりと収納。
【右】仕事で家を空けている息子さんの部屋で趣味の織物を楽しむ奥さま。
