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長野県上伊那郡・阿部さん

1996年12月築

自然の中で、暮らしを楽しむための家づくり。

設計ファイル

美しい自然とのつながりを、大切にした家。

写真:長野県上伊那郡・阿部邸

阿部さんの家の最も大きな特徴は、美しい自然が広がる外部とのつながりを大切にしているという点です。

ナシ園が広がる南面に大きなガラス戸の開口部を設け、さらにサンルームを設けることによって、建物の内と外とのつながりを考えました。また、設備機器類をガレージ内に収め、電気の引き込みを一箇所にまとめて地下を通して家の中に入れるなど、外観をすっきりときれいに見せる工夫がされています。

家の中央に設置した薪ストーブは、太陽の顔が見えない日などに稼動させます。薪ストーブ上部の壁に設けられた小窓は、暖気の流れと換気を考えてのもの。煙突は、2階ホールにあらわしで突き抜けています。上昇する熱の恩恵に預かり、煙突の周囲の空間に暖かさを与えてくれます。

一体感のある広い空間づくりとともに、駐車スペースから洗面室へ、またキッチンから外のテラスへと出入り口を設けるなど、生活するための動線もしっかりと考えられた設計です。

写真:薪ストーブの煙突・階段 写真:ピッツァ用石窯
【左・中】薪ストーブの煙突は、そのまま2階ホールへ。暖気の流れと換気を考え、ストーブ上部には階段へと抜ける小窓が設けられている。
【右】 建物西側のテラスには、友人が設計しているピッツァ用石窯が置かれている。

建物概要


長野県上伊那郡・阿部さんの家平面図(クリックで拡大:40KB)

家づくりと暮らし

人、地域、自然、環境と、もっともっとつながりたい。

「2つのアルプスが見える町」―長野県上伊那郡飯島町は、西に中央アルプス、東に南アルプスという2つのアルプスを臨む、長野県南部にある町です。

人口一万一千人あまりのこの町に、東京生まれの阿部さんと、スペイン人の奥さまのお二人が移り住んだのは、平成9年のことでした。

ランドスケーププランナーという仕事に従事していたご主人は、もともと自然への関心が高く、また海外赴任の経験の中から、ごみごみした都会暮らしがすっかり嫌になってしまったといいます。そして、“自然の中で暮らしたい”という思いが、“新天地を求めて長野へ”という、人生の大きな転機を迎えることとなりました。

ところが、長野に移り住んで最初に暮らした駒ヶ根市内のアパートで、その美しい自然が、二人の想像をはるかに超える「厳しさ」をも持ち合わせていたことを身をもって知ります。冬は、家の中でも温度が氷点下となり、吐く息は白く、キッチンの水は凍り…。

「冬になるのが怖かったです。暖房をつければ結露で窓はベチャベチャ。“こんなはずではなかった、もっと自然の中の暮らしを楽しむために移り住んだはずなのに”と…」。奥様は当時の気持ちをこう振り返ります。

写真:吹き抜けより居間を見る 吹き抜けより居間を見る。窓には木製サッシュを使用。

そこで、こうした自然の中でいかに暮らしを楽しむか、そのための家づくりに真剣に取り組むこととなりました。お二人はできるだけ広いところでゆったりと暮らしたいと、隣町の飯島町に400坪という広い土地を見つけ、次に、天井が高く広い空間のある家にしたい、そんな思いを満たす家を探し始めました。

「住宅展示場を見ましたが、フィットするものがありませんでした。それにせっかくこんなに素晴らしい自然があり、美しい風景に囲まれているのに、地域に合った素材や環境を無視して、全国どこでも同じスタイルの家がここに建つなんて、おかしな話ですよね」と阿部さん。

自然素材を使い、環境負荷を抑え、しかも理想の空間を実現するためには─こうして阿部さんご夫妻が考え、選んだのが、「OMソーラーの家」でした。

写真:居間
ソファー、チェアー、立ち下がりダクトのブルーを基調に、白い壁と唐松の美しさが映える。
奥様の毎日のお手入れがすみずみまで行き届く、気持ちのよい空間。

この家に住み、やっと心から“暮らしを楽しむ”ことができるようになった。

写真:前日に降った雪が残る北側から家を臨む

音楽を聴くのが好き、料理を作って食べるのが大好きという阿部さんご夫妻のOMソーラーの家は、オーディオルーム、暖炉のある居間、ゆったりとしたキッチンがひと続きになった、高い天井をもつ大空間の家です。

構造材や外壁の一部に、地元信州産の唐松材を使い、窓はすべて木製サッシュを採用するなど、戸外に広がる雄大な景観との調和を大切に建てられています。「好きな音楽をかけ、おいしいお酒や料理を楽しむのは最高」と言うご夫妻は、スペイン料理などの西洋料理は奥様、和食と中華料理はご主人の担当と、互いに得意分野の料理にたっぷりと時間をかけて楽しんでいます。

写真:サンルーム 土を起こして設けたサンルーム、居間南側に敷いた自然石など、外と内とのつながりを自分たちの手で行い生んでいる。

さらに暮らしを楽しむための家づくりは、入居後も続きます。美しい空気と景色を存分に楽しみたいと、山並みが眺められる建物の西側部分の土を起こし、床に敷石を用いたテラスを設けました。気持ちのよい暖かい日には、冬でもここで食事をすることができます。

また、居間の南側に自然石を敷く、菜園を設ける、建物の西側には20メートルに及ぶ木製の塀やパーゴラを作る、さらには玄関前へのコンクリート流しまで、自分たちの手で行いました。実は、これら外部空間の利用法は、すべて家の平面計画の段階から、すでに考えられていたものだそうでです。

写真:和室 和室は、書道をたしなむ奥様の希望で設けられた。障子は、雪見障子になっている。

外構については、ゆっくりと進められています。ご主人とともに奥様も、青年海外協力隊のスペイン語教師という仕事をしながら、互いに協力し合い、少しずつ少しずつ、およそ3年の時間をかけての庭づくり。次なるステップは、家の周りに高木や低木など、場所に応じた植木を選定し、植えていくことだそうです。竣工して6年経つ現在でも、阿部さんの家づくりはまだまだ進行形です。

2階ホール。吹き抜けに面した手すりの下は、後からガラスを嵌め込んだ。お子さんのための阿部さんの手づくり。

現在、「アート・ボー・エントランス」という会社を立ち上げ、一般住宅における外構計画も含め、景観と調和し建物とつながりのあるガーデンプランの提案を仕事としている阿部さん。「一日中家の中で仕事をしていることがありますが、窓から山々が眺められ、全然疲れないんです」と、家の中に居ながら自然とのつながりを感じさせるこの家に、大変満足しているとのこと。「この家は、どのルームに行っても寒くない、朝起きるのも平気。私は、日本に来てからずっと落ち着けなかったし、ストレスが溜まっていたけれど、ここに来て初めてリラックスすることができたのよ」と奥様。この飯島町でOMソーラーの家に暮らすようになって、やっと心から“暮らしを楽しむ”ことができるようになった、とお二人は笑顔で話されます。

サンルームにて。南側は一面のナシ園。初夏になると、一斉に開花する白い花が、美しい景色を届けてくれる。

そして、この家での暮らしは、阿部さんご夫妻が予期しなかった、最も大きな喜びを生んでくれました。結婚10年目にして初めて、赤ちゃんを授かったのです。「同じ工務店で家を建てた方で、僕たちのように子どもができたお宅が3軒ほどあるそうです。もちろん偶然かもしれませんが、ひょっとしたら、OMソーラーのおかげかもしれませんね(笑)」

写真:2階子ども室 写真:アプローチから玄関へ
【左】2階子ども室。天窓からは、夜空に広がる満天の星が見えるという。
【右】アプローチから玄関へ。ちょっと荷物が置ける棚が重宝する。

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