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OMソーラー特別企画/“大人になった僕らは、軽井沢の夏を知る”Summer Vacation in KARUIZAWAOMソーラー特別企画/“大人になった僕らは、軽井沢の夏を知る”Summer Vacation in KARUIZAWA

志織洋輔麻友涼

Introduction

大学時代のゼミの友人である洋輔、志織、涼、麻友。
卒業してからは集まる機会も少なくなっていた4人だったが、
3年ぶりに再会し、軽井沢への小旅行へ出かけることになった。

元恋人同士だった過去を拭いきれない涼と麻友。
大学時代から洋輔のことが好きだった志織。
志織の気持ちに気付きつつあり、揺れる洋輔。

お互いの想いが交錯しながら、軽井沢小旅行は2日目を迎える。

Day 2 10:00/淹れたてのコーヒーで迎える軽井沢の朝/丸山珈琲 沢屋
撮影:丸山珈琲軽井沢本店

軽井沢は真夏でも涼やかな朝を迎える。
昨夜遅くまで起きていたことで、4人は体に若干の倦怠感を覚えていたが、
鳥のさえずりとひんやりとした朝の空気に高揚し、起床した。

「なんか、おいしいコーヒー飲みたい」
「それ、いいな。ちょっとでかけようか」

4人は簡単に身支度を整えると、コテージを後にした。

撮影:丸山珈琲軽井沢本店

静かなテラス席に、コーヒーとトーストの匂いが広がる

憧れの場所で、朝食を

「ここでの朝食、憧れてたんだよね」
店内で唯一のテラス席を確保できたことに、喜びを隠せない麻友がはしゃぐ。
都内にも店舗を持つ、「丸山珈琲」の本店。

4人は焼き立てのトーストと、淹れたてのコーヒーの香りを深く吸い込む。

「たしかに麻友は、こういうお店が好きそうだよね。ゆったりした雰囲気」
厨房を覗きながら、志織は大きく伸びをする。

「朝食の時間と恋愛は、ゆったり進むのが一番なんだよ」
「勉強になる(笑)」

ふたりのやりとりを物憂げに眺めていた洋輔の視線に、麻友が気付く

「あれ、洋輔、どしたの?」
「え? ううん、なんでもない」

「意識した途端に、ダメになるタイプだからな」
涼が洋輔を淡々とからかう。

「意識?」
志織が不思議そうな顔で涼に返す。
テーブル下では、洋輔の踵が涼のつま先に重くのしかかっていた。

撮影:沢屋軽井沢バイパス店

数えきれないほどのジャムが並ぶ店内に、軽井沢のやわらかい風が流れる

何気ない会話と、触れ合う指先

「何を買っていこうかなあ……」
コーヒー店を後にして散歩をしていた途中、4人は手作りジャムが人気の店「沢屋」に立ち寄った。

社会人になって3年目、職場の空気にすっかり順応した洋輔は、旅行に行くたびに同僚の人数を思い出し、お土産としてふさわしいものを探すクセがつく。

「えらいねー? わたし『旅行に行く』なんて一言も伝えてないから、何も買わないよ?」
「うわ、おれ、めっちゃ自慢してきちゃった……」
「そういうところ、ホント頭働かないよね(笑)」
涼を麻友がからかう。

変わった果実のジャムを見つけ、手を伸ばす。
たまたまそこに、志織の指先が触れる。
「あ、ごめ……」
「あ、うん……」

20代も中盤に差し掛かるのに、いまだにこんなことで耳の端が熱くなる。
そのことを恥ずかしく感じ、洋輔はさらに赤面した。

Day 2 11:00/「どこにも行かない、何もしない」コテージに流れる至福の時間/クラスベッソ西軽井沢

「なんか、満たされ過ぎたから、何もしたくない」

朝食後、4人は軽井沢の街を遠くまで散策しようと計画していたが、
ふと飛び出た涼の一言に、3人は意外にも深く共感した。

「たしかに。このままコテージに戻って昼寝とかするのも、悪くないね」
「いいなそれ。たまには涼のように、マイペースに過ごしますか」
「あれ、意外だな、みんなが同じ意見なんて」

“何もしない時間”いつも都心で何かに追われていた4人に、
それは、とてもぜいたくなことに感じられたのだった。

食器を重ねる音とふたりの声だけが、キッチンに響く

「いい恋だった証拠」

「あれ? ふたりは?」
「散歩に行ったよ? じっとしていられないタイプだよね、洋輔も(笑)」

せっかくコテージでゆっくり過ごそうと言ったのに、
30分もしないうちに出かけてしまう。
元から協調性はない4人だったのかもしれない。
だからこその、居心地の良さもあった。

「進展あるといいね、あのふたり。恋の始まり、いいなあ」
心なしかうれしそうな麻友に対して、涼が皮肉を漏らす。

「コチラは終わったふたり、ですもんね」
「そういうこと言わないの(笑)。でも、ひさしぶりに再会して、こうやって普通に話ができる関係になってるんだから、きっといい恋だったって証拠だよ?」
「おー、そう?」
「うん、きっとそうだよ」

コテージに、別れた恋人とふたりきり。
それでも気まずさを覚えないのは、相手が麻友だったからだろう。
もっとも自分を理解してくれた人は、この人なのかもしれない。
涼は少し複雑な気持ちで、窓から見える広大な景色を眺めた。

「近くを周ろう」と借りた自転車ひとつぶんの距離が、ふたりを引き離す

告白

「気持ちいいなー、マイナスイオン、すごい浴びてる気がする」
「うん……。そうだね」

コテージで自転車のレンタルができることを知った洋輔は、いても立ってもいられずに、志織を誘ってサイクリングに出かけた。ペダルを漕ぎながら、息が苦しくなるぐらい笑い合っていたふたりだったが、ベンチで休憩していたところで、志織がゆっくりと口を開く。

「あのね」
「……うん?」
「わたし……転勤になったんだ」
「え!?」

突然の告白。
志織は、2週間後には東京を離れ福岡に行く旨を、
遠くに悠然と佇む浅間山を見すえながら淡々と話した。

洋輔はその事実を聞かされてから、ほかの話が耳に入らなくなった。
自分のことを想ってくれていた人が、遠くに行ってしまう。
好きだと思い始めた人が、離れていってしまう。
受け入れがたい現実が、新たな未来を目指し始めた洋輔の前に降ってきた。

Day 2 12:00/上質なチーズとワイン 高原の恵みに満たされる/アトリエ・ド・フロマージュ
撮影:アトリエ・ド・フロマージュ 本店

「軽井沢は、チーズがとにかくうまいから」と言ったのは、涼だ。
1泊2日の短い時間の中では、食事をする回数も限られる。
4人は想い想いに候補となる店舗をいくつも挙げたが、涼の熱意もあって、
最終日の昼食はその中から「アトリエ・ド・フロマージュ」に決まった。

店内にはたくさんの種類のチーズが販売され、
奥にはレストランも併設されている。

山と畑に囲まれたこの店で、少し大人になった4人の小旅行は続く。

撮影:アトリエ・ド・フロマージュ 本店

ずらりと並ぶチーズをひとつひとつ手に取るふたり

変わったものと、変わらないもの

「これ、おいしそう!」
「ほんとだ! なんだろう? ゴルゴンゾーラ?」

志織と麻友が自宅用にとチーズを選んでいると、涼がふたりに向かって話しかけた。
「ブルーチーズじゃん。ゴルゴンゾーラと同じ『青カビ』の定番だけど、匂いは全然違うだろ」

「わー! 出た、チーズ奉行! なつかしい!」
「え! そのぐらいはチーズ好きじゃなくてもわかるだろ!?」

つい知識を披露してしまったことで、涼が志織にいじられる。
この一連の流れは、学生時代のころから定番だった。

少し疲労が残った目元と、照れて目を伏せたときに少し口角が上がる口元。
ふとした表情に、涼が学生時代とは違う色気を宿すようになった、と麻友は思う。

3年間で何が彼を変えたのかわからず、それを聞き出すのも怖い。
でもこうして当時とまったく同じやりとりが繰り広げられているのを見ると、やはり涼は涼なのだと安心する。
そして自分は、変わってしまっていないか。また、変わらなすぎていないかと、また麻友は不安になるのだった。

撮影:アトリエ・ド・フロマージュ 本店

1本の白ワインについて語りだす涼。
からかっていた3人だが、徐々に引き込まれていく

このワインは、僕らとちょっと似た部分があると思うんだ

席に着いても、涼がワインやチーズについて語る時間が続いた。

「うん、あのな、涼から薀蓄を披露されなくても、きっとこのワインはうまいから、安心していいよ(笑)」

とうとうしびれを切らした洋輔が止めに入るが、話は続く。

「まあ最後まで聞いて。このワイン、200年近く続いてるワイナリーが、『革新をつくり続ける』って気持ちを込めて作ったんだよ。伝統と革新から生まれたわけ。ちょっと強引かもしれないけど、それって、うちらにも重なる部分があるんじゃない?これまでの関係性がありながらも、少しずつ変化して、新しい自分になろうとしているでしょ?」

「おおー!?」

予想外の着地点に、3人は思わず声を揃える。
「このままでいたい」という気持ちと「このままじゃいけない」という気持ちは同居している。悩んでいるのは自分だけではないのだと、麻友は少しだけ気が楽になった。

Day 2 15:00/僕らは軽井沢の夏を知り、日常に戻る/熊野皇大神社
撮影:熊野皇大神社

「樹齢850年の木があって、そこがパワースポットみたくなっているんだってさ」
場所は、長野と群馬の県境。4人はこの旅の最後の目的地、熊野皇大神社にいた。

「旅行、終わっちゃうな」
「またやろうよ、こういう旅」
「うん、そうだよ」
「次は俺も、自転車借りるぞ」

旅が終わることへの名残惜しさと、充実した二日間への満足感。
非日常的な時間を振り返りながら、4人は本殿へ続く階段を登り始めた。

撮影:熊野皇大神社

旅の終わりを感じさせるひんやりとした空気が、ふたりを包む

傾き始めた平行線

洋輔から「ふたりにさせてほしい」と頼まれると、
涼は「外野は静かにしてますよ」と皮肉を言いながら、麻友を連れ出した。

「あのふたり、うまくいくといいね」
「まあ、たぶん大丈夫でしょ」

この時間にしては、少しひんやりとした心地よい風が届く。
標高のせいなのか、それとも神社を囲む森林が、地下の水を吸い上げて冷却効果をもたらしているのだろうか。

「あのさ」
目線は合わさぬまま、涼が麻友に声をかける。
「ん?」
「今度、ふたりでどっか行かね?」
「え、デート?」
「いや、そんな大げさなもんじゃねーけど……」
「えー。デートなら、行く。そうじゃないなら、行かない」
「……じゃあ、デート?」
「じゃあって何!?」
「うるせえな、デートだよ! いいから来いよ!」
「行きますよ! 行く! 行くに決まってるじゃん!」

素直じゃないふたりは、相変わらず平行線をたどるかもしれない。
それでもこの一泊二日があって、線路のように交わることのなかった私たちの関係も、少しは傾いた気がする。麻友はそんなことを考えながら、山の頂きに吹く涼やかな風を受けて、そっと目を閉じた。

撮影:熊野皇大神社

お互いの絵馬に書かれた内容を見せ合い、笑う

ふたりの願い

「あれ? ふたりは?」
「うん、ちょっと、外してもらった」
「え? どして?」
「うん……あのさ」
洋輔は志織に、絵馬を差し出す。

「ふたりで1個ずつ書こうよ。転勤するんだし、あるでしょ、お願いしたいこと」
「おー! うん、おもしろいね。書こっか」
話をはぐらかされたことに違和感を覚えたものの、
洋輔の提案が気に入った志織は、絵馬とペンを受け取る。

「なにを、書くの?」
「え……? 『福岡で、いい物件が見つかりますように』って(笑)」
「あはは、切実だ(笑)」
志織の悩みは、いつだってどこか現実的なところがある。

「洋輔は?」
「うん……?」
「何て書いたの?」
「えっと……、『遠距離恋愛でも、耐えられる精神力をください』って」
「……え?」

夏の軽井沢に、ひんやりとした風が吹く。
木々が音を立てて揺れる。

「もう知り合ってずいぶん経っちゃったから、いまさら隠れた魅力も何もないんだけど……。遠距離もがんばるから、よかったら俺と、付き合ってください」

洋輔はそう言うと姿勢を正して、頭を下げる。
志織は、洋輔の持っている絵馬に書かれた、決してうまいいとは言えない字を見て少し、微笑んだ。

終わりと始まり

「遅いぞー!」
階段から降りてくる洋輔と志織を確認すると、涼と麻友が、同時に叫んだ。

「ごめんごめん、なかなか時間かかっちゃって……」
「言い出すのに時間かかったんだろ(笑)で、……どうだった?」

苦笑いしている洋輔に、涼が単刀直入に聞く。

「えっと……付き合うことに、なりました」
「……はい」
洋輔と志織は、誰とも目を合わせないようにして答える。
ふたりともチークでも塗ったかのように、頬が紅くなっているのがわかった。

「やったー!!」
麻友は志織に全体重を乗せて抱きつく。
思わず倒れそうになるのを、洋輔が支えた。

「あははは! ありがと! いやー、長かったあ~(笑)」
「ほんとだよー! 洋輔はいくらなんでもアクションが遅すぎ」
「なんで麻友に説教されなきゃいけねーんだよ(笑)」
「うまくいったのは、外野の俺が静かにしていたおかげだな」

「この年齢にもなって『付き合うこと』で祝われるのは恥ずかしい」
と照れながら、
志織は長い片思いが終わったことに喜び、洋輔は新たな日常の始まりに胸を躍らせた。

旅が終われば、4人はまたそれぞれの暮らしを始める。
得意先からの無茶なオーダーや、なかなか通らない社内稟議に頭を悩ませることもある。
そんな日常を、この2日間の経験が変えることはほとんどないだろう。

それでも、彼らにとってこの2日間は、かけがえのないものだった。
自然に囲まれたコテージで過ごした時間は、「また明日から、がんばるか」と、少し胸を張って歩きだせるくらいには、4人の心を癒し、鼓舞したのだから。
終わりは、始まり。
4人は、軽井沢の夏に吹いた風をたまに思い出しながら、今日も少しだけ新たな自分で、それぞれの日常を過ごしている。

END

撮影:熊野皇大神社

充実した二日間が終わって、新しい日常が始まる

Director & Editor: Masaru Yokota (Camp) / Writer & Planner : Masahiko Katsuse (press labo,Inc.) / Photographer : Nozomu Toyoshima / Makeup : Yukiko Sumi / Cast: Saorin as Shiori, Ryouzan Sawamura as Ryo, Mayoyo as Mayu, Toshiki Imafuku as Yosuke / Design & Programming : Design Studio L / Supervisor: multiple Inc.