空間が良ければ、
“100万円の家具”なんて要らない

―ここからは、ご両親のお宅でお話を聞かせていただきます。まず、息子さんが協力してご両親のお家を建てるということが、とても親孝行に感じられました。実際に住まわれてみた、率直な感想を教えてください。

遠藤豊さん(以下、父)
私もエンジニアでして、すぐそこに工場があるんですが、当初は「太陽熱で空気を暖める」という仕組みに、ちょっと理解できない部分もあったんです。でも息子に強く薦められたので、任せてみようと思った。住んでみてわかったのですが、他所の家は足元が冷える(笑)。もしかしたら温度は同じなのかもしれないですけどね。それに家は、2階まで吹き抜けになっているので、足元だけ暖めればあとは何もしなくても家全体が暖かいんですよ。
遠藤さち子さん(以下、母)
私は血圧が高いので、お風呂場やトイレと部屋の温度差が解消されたことが助かりました。さすがにこの歳になると、年々寒さに弱くなっていくので、真冬になると補助暖房を点けるんですけど。
遠藤さん
ちょっと補助暖房つけないで暮らしてみなよ。意外と冬でも暖かいよ。
やだよ、寒いもん。お前の住んでる辺りより、こっちのほうが1〜2度寒いんだから(笑)。お母さんの身体のこともあるし。

―お二人が一番気に入っているところを、それぞれ教えていただけますか?

光の入り方かなあ。リビングの中央に立つと東西南北すべてから外が見え、どの時間でも陽が射すんです。昼間は電気がいらないくらい。自分たちだけだったら、こういう家はなかなかつくれなかったと思います。
でも夜になると暗いって、後から電灯を足してもらったんだよね(笑)。
そうそう、老眼で見えないから(笑)

―お母さまは、この家のどこが気に入っていますか?

建てる際にいろいろ言ったので、全部気に入っていますよ。西日が射すキッチンは夕方も明るくて助かりますし、二階の脱衣所からベランダが繋がっているのも、他の部屋を介さずに洗濯物が干せるので便利です。
遠藤さん
部屋はもちろん、玄関も廊下も階段もいちいち広いよね。洗面所だって普通の家の倍はある。
「家の中ですれ違っても、楽に通れるようにしてほしい」と言って、全ての部屋を広くとってもらったんです。洗面所だけでもきっと子ども部屋にできるくらい広いよねえ。

―これだけ広いと、お孫さんたちが遊びにきても窮屈しなさそうですね。

みんなが来るといつも賑やかだよなあ。お嫁さんもそうだけど、みんなできた人で、しょっちゅう遊びに来てくれてね。みんな素直で良い子ばっかりだし。世の中のことを思うと、うちは幸せなんだろうなって思いますね。
遠藤さん
僕と弟がいてそれぞれに子どもが3人ずつだから、大家族ですよ。どちらの家も自転車で行ける距離だったから、小さいころはよく面倒を見てもらっていました。
いまも「一緒にごはん食べよう」って言うと、10人くらいすぐ集まるんですよ。食事代が大変(笑)。
でもそれも今のうち、と思ってね。子どもたちも大きくなったら、滅多に遊びに来てくれなくなっちゃうから。だからいまでも「何にもしてやれないけど、何かあったときにはすぐそばにいるからね」って意思表示をしているんですよ。最後は、いつでもここに逃げて来られるようにって。

―家具が最低限しか置かれていない中でも、大きなローテーブルがあるなど、受け入れる環境が整っていることを感じさせますね。

リビングは広く、家族が全員集まっても窮屈じゃない空間に、というのが私のこだわりでした。さっきも言っていましたが、全員そろうと12人の大家族ですが、よくここでみんなでご飯を食べています。それから、ここに住んで「空間の価値」っていうものがよくわかったんですよ。空間が良ければ、100万円の家具なんて要らない。この家には高価なものなんて何もないですけど、それで十分成り立つんです。空間自体が最高の贅沢ってことなんですよ。

薪ストーブや水場など、“時間”を贅沢に堪能できる遠藤さんのご自宅と、家具を最小限に抑え、一つひとつの“空間”を最大限に確保したご両親のご自宅。“時間”と“空間”、いずれも豊かな暮らしを送るうえで欠かせないものであり、人と人が絆を深めるうえで、とても大切なもの。大切な家族のため、また建築のプロとして「家族で過ごした日々が受け継がれるように」という想いを込めて、それらを徹底的にこだわり抜いた遠藤さんの建てた家には、今日も家族へのそれぞれの笑顔があふれ、その風景は脈々と流れていくことだろう。

遠藤さんご一家

埼玉県ふじみ野市在住。遠藤 誠さん、由紀さん、長男(16歳)、長女(12歳)、次男(10歳)の5人家族。ご自宅だけでなく、ご両親の父・豊さん、母・さち子さんが住む家や、奥様である由紀さんのご実家にもOMソーラーを導入し、三世帯に渡りパッシブハウスでの暮らしを営んでいる。
学生時代に建築家志望だった誠さんは、現在もOMソーラーの提携工務店である相羽建設株式会社にて営業として活躍。由紀さんのご実家や、職場近くに引っ越すことにしたご両親の家の建て替えに携わり「建築は愛。近親者の家こそ、こだわりぬいたものを」と、OMソーラーの家を建てた。老朽化した生家も建て替えを行い、現在はそこで5人の家族と自然と調和した暮らしを送っている。