自然の変化に応じて
人間が活動的になる暮らし方

―陽がふり注ぐ吹き抜けのリビングはもちろん、キッチンも廊下も、どこにいても過ごしやすい温度ですよね。

宮田
家全体の室温が安定しているんですよ。OMソーラーと木や漆喰といった自然素材が作用し合い、温度を保っているんだと思うんです。床もあったかいので、家族みんなでよくゴロゴロしていましたね(笑)。真冬でも暖房器具はあまり使わないかな。夏場はもっと過ごしやすくて、エアコンを付けずとも暑さを感じないんです。だから、間取りはゆったりしたつくりですが、冷暖房費はそれほどかかっていません。
宮田大史(以下、大史)
マンションからこの家に引っ越してきて、冬は暖かく夏は涼しいということにまず驚きました。しかもそれがほどほどで、ちょっと手を貸してくれる程度なのがいい。寒ければ着る、暑ければ脱ぐ、というように、四季を感じさせてくれるんです。便利すぎるものって、むしろ飽きてしまう。“自然の中での生活”を、完全に捨てさせないところもOMソーラーの長所ですよね。それと湿度のコントロールもパーフェクト! マンションではカビに悩まされていたのですが、結露もしないんです。
英子
OMソーラーのシステムをどう利用したらよいのか、最初は学ぶ時間が必要でした。だけど住み続けるうちに、設備の調子も分かるようになってきたんです。ちょっとファンの音が気になって、ハンドリングを交換したのが住み始めて15年目。壊れたわけではなかったそうですが、改良された新しい製品のほうが静かということでしたので、取り替えました。給湯ボイラーも同じ時期に交換しました。こちらも壊れた訳ではなかったそうなんですが、10年くらいが交換時期だということで、交換したんです。
宮田
機械設備というのは、大概10年くらいで壊れてしまう。この家は不思議だよね、15年もっているんですから。もちろん使用頻度との関係もあるかもしれません。ですが50年のスパンで考えたとき、10年ごとに5回交換するのと、15年ごとに3回では、生涯負担も変わってくる。20代30代で高級住宅を購入しても、年金が支払われるかすら不明瞭なこのご時世、定年後はどうするつもりですか、という話。ローンもまだ残っていたら、生きていくことすら難しいですよね。「格好いい家」もいいけど、その点を専門家はきちんと伝えていくべき。生涯負担の少ない家は、自動的に長持ちする家になるんです。
大史
OMソーラーって、鋳物のフライパンや南部鉄器の急須みたいなんですよ。お母さんが使っていた道具を、子どもに引き継いでいくような。ちょっと古くなっても、自身で手を掛けることにより愛おしくなっていく感覚ですね。モノのよさがわかっているからこそ、使い続けていきたいと思える。知らなければ不便なことも、きちんと理解して付き合えば、便利だったりする。OMソーラーにはそれがあるんです。自らの意思をもって“住む”という感じかな。
宮田
パッシブは「受動的」という意味だけど、僕は「能動」だと考えているんですね。例えば電気だけの空調設備であれば、じっとしていたって暖かくなります。それが受動。気温に応じて、服を着たり、陽の当たるところへ移動したり、行動を伴うのが能動。だから実は、パッシブは能動なんですよ。例えば海や山へ行くと、人間は新鮮な空気を吸い、動き回り、ぐっすり眠れますよね。そのように人間が活動的になるのは、家がパッシブだからであるといえる。自然の変化を受け入れ、パッシブを守り続けるには、エネルギーが必要なんです。

引っ越し当初は広さを持て余していたというリビングも、いまでは家族にとってなくてはならない空間となった。大きな窓から差し込む光で時間の流れを感じ、自然の変化を受け入れることで四季の移ろいを楽しむ。子どもたちがそれぞれ独立をしても、家族が集い、会話を交わす場所であることは変わらない。リビングの中心に吊るされた照明は、室内を巡る空気によりいつも微かに揺れている。大史さんはその様子を眺め、「家の鼓動なんです」と微笑んだ。優しく刻まれるそのリズムは、どこにいても家族それぞれの胸の内で鳴り響いているのだろう。

宮田識

クリエイティブディレクター、アートディレクター。1948年千葉県生まれ。’66年神奈川工業高校工芸図案科卒業後、日本デザインセンター入社。’78年株式会社宮田識デザイン事務所設立。
’89年株式会社ドラフトに社名変更。日宣美奨励賞、朝日広告賞、東京ADC最高賞など受賞歴多数。ドラフトには多数のデザイナーが所属し、グラフィックデザインや広告宣伝をベースに、商品・企業のブランド開発、店舗開発、パッケージ、SPツール、カタログ等、多方面に渡りデザインを行っている。’95年から自社プロダクトブランドD-BROSの企画、制作、および販売を開始。’96〜2001年までOMソーラーハウスの広告を手掛けた。近著に『DRAFT 宮田 識 仕事の流儀』(日経BP社)がある。