Interview

Interview 02

「自然を受け入れ、共生する」
時の経過が居心地の良さを育む
パッシブデザインの木の住宅

株式会社ドラフト代表取締役社長 宮田識さん

Editor:横田大(Camp) Writer:大森菜央 Photo:豊島望
緑に囲まれた高台にある閑静な住宅地。陽当たりのよい東南向きの一画に、クリエイティブディレクター・宮田識さんの住まいはある。主宰するデザイン会社・ドラフトがOMソーラーの広告を手掛けるようになった1996年と時を同じくして、宮田さんはOMソーラーの家を建てた。「パッシブデザインであること」「木の家であること」これらの選択は、宮田さんの実体験に基づいているようである。20年以上の月日を経て感じる家への想いを、奥さまの英子さん、長男の大史さんを交え、ご家族の言葉を通して紡いでいこう。

家づくりには“デザイン”の前に
考えるべきことがある

―ドラフトではパナソニックやキリンビール、モスバーガーなど、さまざまな企業の広告クリエイティブを手掛けられています。家のデザインを考えたとき、宮田さんはどのような在り方を求められていますか?

宮田識さん(以下、宮田)
“デザイン”という考えは、あまり家に持ち込みたくないんですよ。家の在り方の基本は生涯負担の少ないもの。そのうえで、どういうデザインを施していくかが大切なんです。いまはデザイン先行型の家が多いですよね。施主も、設計士も、施工する人間も、デザインありきで家をつくっているから、それはよくないんじゃないかなと思っています。維持費を考慮せずに建てると、銀行に完済する前に売ることになってしまう。特に日本は築年数が経つと家自体の価値が失われていくでしょ。だから家は生涯負担が極力かからない構造であるべきなんです。
宮田
ディティールに寄った話をすると、丁寧につくることで生まれてくるデザインもあるんですね。僕がプロモーションを行ったパナソニックの仕事で、深澤直人さんがデザインしたシステムバスルームがあります。デザインコンセプトは「隅と縁」。壁と壁のつなぎ目やバスタブの厚みなど、細部を徹底的に整えたことにより、美しさと使いやすさが導き出され、気持ちのよい空間となった。「なんとなくきれいだよね」で済ませてしまうと、いつまで経っても理解されないんです。設備機能だけで評価せずに、わかりやすい言葉で示してあげると、デザインは伝わるんですよ。

―宮田さんのご自宅も、木肌の表情や質感など、木の魅力が細部にまでいかされていらっしゃいますね。

宮田
山には多種多様な木が生えていますよね。設計は建築家の長谷川敬さんにお願いしたんだけど、ひとつの森の中にいるような状況を彼はつくったんだと思う。木を熟知しているからこそ、この空間ができたんでしょうね。竣工した時は「バラバラに、いろんな木を使ってるなあ」って思いましたよ(笑)。だけど20年経って、木々が馴染むようになった。色合いも統一されてきてね。

もともと木は大好きだったんです。きっかけは20代後半の林野庁の書籍の仕事。筑波研究学園都市に農林省林野局林業試験場(現・森林総合研究所)が移転したころで、そこに毎日通っていたんですね。本をつくるために、先生方から木について教え込まれ、林業家の話を聞き、さまざまな産地に足を運んだ。そうして木の素材本来のすごさを認識したんです。だから木の家を建てるのは、ごく自然な流れだったんですよ。室内の柱や梁はもちろん、外壁まわりの柱もむき出し。壁は漆喰で塗っているだけで、すべて当時のまま、どこもいじっていません。

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自然と一緒に暮らしていることを実感できる、穏やかな空間