vol.31 西沢 立衛 さん(様々な建築や街)
西沢立衛建築設計事務所 横浜国立大学大学院Y-GSA教授

唐招提寺・金堂唐招提寺・金堂

パルテノン神殿(アテネ・アクロポリスの丘/撮影:西沢立衛)

パルテノン神殿
(アテネ・アクロポリスの丘/撮影:西沢立衛)

ラ・トウーレット修道院(撮影:西沢立衛)

ラ・トウーレット修道院
(撮影:西沢立衛)

ユニテ・ダビタシオン(マルセイユ/撮影:妹島和世)

ユニテ・ダビタシオン
(マルセイユ/撮影:妹島和世)

ガルダイアの街並み(アルジェリア/撮影:西沢立衛)

ガルダイアの街並み
(アルジェリア/撮影:西沢立衛)

大学に入って、最初に覚えた建築はミースだった。当時は建築と言われてもよくわからなかったが、ミースが他と違うということはよくわかった。柱一本、ガラス一枚、すべてが誰とも似ておらず、独創性の塊のような建築だと感じた。

その後三年生になって、歴史の授業で奈良に行った。どれも印象深かったが特に、唐招提寺と東大寺南大門が、素晴らしかった。太古的で骨太な構造体のダイナミズムがあり、中と外が地続きで、庇が大きく持ち出されて、建築と自然が融合する雄大さがあった。

四年で行ったヨーロッパも、印象深かった。パリは街も建築も美しかった。裏通りすら美しかった。道が美しいものだということは、僕はパリで知った。
80年代当時、ヨーロッパの街はどこも静かで、古く、貧しかったが、ある豊かさと気品があった。

地中海に出て、ローマに行って、ローマの迫力にたじろいだ。地面を掘ると恐ろしい廃墟が次々と出てくるというような街だった。ボロミーニもパンテオンも排気ガスで真っ黒だった。ローマの黒さに比べて、その後に見たアクロポリスの、光を放つような輝きは印象的だった。マルセイユのユニテとリヨン郊外のラ・トウーレット修道院は、その旅で見たもっとも感動した近代建築だ。彫刻的といえばいいだろうか、粘土をばんばん足して肉付けしていくような足し算的迫力、それは肉欲的というか、官能的というべきか、建築が今まさに目の前で創造されつつあるという錯覚を見た気がした。

その後アフリカのオアシスを巡った。自然と宗教、風土、生活が調和した世界の美しさに感動した。大学卒業後の建築行脚は紙面の関係で省略するが、インド、北米、南米、アジア、中近東で、素晴らしい街や建築、集落を見た。建築や街に感動したから建築家になったのか、建築を志したからそれらに感動するのか、順序はわからないが、建築を志すきっかけはこの一回この瞬間というのでなくて、多くの素晴らしい瞬間があったと思う。