vol.17 三澤 文子 さん(Ms建築設計事務所)

vol.17 三澤 文子 さん(Ms建築設計事務所)

オーストラリア大工の家
大工の家(Andy House)は真壁構法で、木材は全て広葉樹。未完の家で、3階建の棟には今も足場がとり付いている。(写真提供:三澤文子)

ある人からオーストラリア行きを誘われた2005年。実はそんなに乗り気でなかった。失礼ながらオーストラリアを歴史の浅い国と認識していて、ヨーロッパなら行きたい。などと内心思っていた。私が岐阜県立森林文化アカデミーで教鞭をとっていたころ、シドニーにあるニューサウスウェールズ大学(UNSW)での共同スタジオの開催を持ちかけられたのだったが、結果はその2005年を皮切りに毎年オーストラリアに通うことになったのだった。1年目のスタジオでは無我夢中で2週間。学生たちと提案作品をつくり上げプレゼンも成功したその達成感は何とも言えないものだった。最終日にシドニーのサキュラ―キーでオペラハウスを眺めながら飲んだ白ワインの味も忘れられない。そしてこのUNSWとの交流のなかで出会った建築家がリチャード ラプラスターであった。

思い返せば私にとって運命的な出会いであったのだ。実はオーストラリアに足を踏み入れる前年の2004年、私は木造建築に関する国際会議WCTEに参加するためにフィンランドのラハティにあるシベリウスホールにいた。そこではその年の世界木造建築大賞の受賞者が基調講演を行っていたのだった。その講演では素晴らしい建築のスライドにすっかり魅せられ、そしてその受賞者が京都大学で建築を学び丹下事務所に勤務していたことが語られさらに驚いたのだった。講演が終わった後、記念出版された受賞者の本を迷わず購入し、「こんな住宅を見てみたい。ただオーストラリアには縁がないな。」と思ったこともよく覚えている。そう、その受賞者がリチャードラプラスターであり、なんとその本を購入した数年後にはリチャードに出会い、彼の設計した住宅を訪ねることができたのだった。

リチャードのつくる木造住宅は私の憧れである。広葉樹(オーストラリア産)を構造材に使っていることで断面が細く、軽やかでエレガントな架構。その架構が内部と外部をさらりと繋げていく。また広葉樹の色そのものを活かしているのでシンプルであり素材感が直に伝わる。さらに細かい造作は日本の大工に引けを取らない技でつくられている。というかリチャードのつきあう大工はクラフトマンで工芸家並みなのだ。そんなリチャードは、つくり手とのコラボを大切にしていることもひしひしと感じ取れる。

オーストラリアの雄大な自然と共に、風景と共に存在する建築は、今思い出してもグッときてしまう恋しい建築なのだ。