vol.14 遠野 未来 さん(とおのみらい/遠野未来建築事務所)

vol.14 遠野 未来 さん(とおのみらい/遠野未来建築事務所)

土の建築
神田SU(東京・1999-2004)。自分の出発点の元自宅兼事務所。今はもうない。(写真提供:遠野未来)

自分にとって建築は遠い存在だった。ものをつくるのが好きで建築に憧れて大学に入ったものの、設計の課題で図面を描きながらそれがどう社会を結びつくのか全く実感がわかず、何のために図面を描くのかもわからず、嫌で仕方がなかった。それより二次元の図面に描けないものを自分の手でつくりたいと思っていた。

実務を経て独立後、インスタレーションの展覧会などをしていたが、様々な要因で家族が精神的にダウンして入院してしまった。その時は縁があって神田のビルに住んでいたが、「住むところをつくり変えないと良くならない」と、そこを自力で改装することにした。その中で最後に出会ったのが土。自分がつくったかたちに初めて土を塗った時の、空間が立ち上がる躍動感。生き物が生まれるような、経験したことがない高揚だった。その瞬間が忘れられずそれ以降、土を使って各地で様々な人と場をつくっている。土を使うということは、地球環境、土地、人、技術。すべてがつながっていることを知ること。自分もそれ以前と以後で考えが180度変わった。特に自分は土を立体的に、現代の造形として使いたいと思っている。

土の建築は世界中にあり、特にこの20年、土を使った建築を復興させようと、世界の人たちがつながりはじめている。ワークショップを通じ仲間が生まれ、それがまた新しいプロジェクトを生んでいく。そんな世界の人と接し、建築にとって一番大事なのは何か?・・・を問えば、最後は技術や素材ではなく「人と家族のつながり」に行き着く。それがあってはじめて建築が成り立つのだと思う。

今年、ウエールズで今までの作品の展示と共に、地元の土と木を使って、「こどものためのシェルター」をつくらせていただいた。それらを見た時のこどもたちの興奮ぶりと大人以上に真剣なまなざし。それを見て自分にとって誰のために建築をつくるのか?という答えが浮かんできた。施主のためなのはもちろんだが、それと共にこれからの「こどもたちのためにつくる」のだと。