vol.9 伊礼 智 さん

vol.9 伊礼 智 さん

銘苅家

久しぶりに伊是名島の銘苅家を訪ねた。

銘苅家は沖縄本島・本部半島の北方、フェリーで1時間ほどのところにある小さな島。二十数年前に訪れたとき、印象深かった集落を包んでいたフクギ並木はなくなり、外部空間が様変わりしていたけれど、銘苅家は昔のままに、ひっそりと簡素に佇んでいた。琉球王朝ゆかりの銘苅家、この簡素ながらも品のある佇まいはどこからくるのだろう?前回は伊是名島の集落を覆い尽くすフクギの並木とその内部の、スージに縫われた家々の外部空間に惹かれた。今回、あらためて銘苅家の佇まいに強く惹かれたのである。そこで早速、実測をしてみた。軒先の高さが地盤面から2100ミリとかなり低めである。この低く押さえた軒先が、銘苅家の控えめで奥ゆかしい佇まいのポイントである。つくり手や住まい手の「よい意志」が伝わってくる。建築はこうありたい、建築の「佇まい」をもう一度考え直してみたいと素直に思わせるオーラを感じた。

「佇まい」とは英語で言うと「atmosphere」がぴったりではないか?雰囲気、大気、空気、惑星を包むガス帯を意味する。良い「佇まい」は建築、環境、設備、素材などの様々(さまざま)な要素のバランスの良さから醸し出され、つくり手(設計者、施主を含む)の「良い意志」が現れると信じている。

「佇まい」は住まいを包み込むオーラのようなもの。銘苅家はとても良い空気(オーラ)に包まれていると感じた。最近は、建築とは人の「情感」を揺さぶるものでなければだめだなあ?と思うようになってきた。頭で理解する建築・・・あれこれと説明しなければならないものではなくて、心の中にすっと入り込んで、ふわっと感情を拡げてくれるようなもの・・・「共感」という言葉しか思い浮かばないが、それは経験も含めた総合的な同意、言語化される前の価値観と言えるのではないか?「佇まい」という言葉自体、情感的にそれを言い表している。