第8回:班目健夫さん

「この人に聞きたい」、第8回目は東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックの班目健夫(まだらめたけお)さんです。班目さんは、西洋医学とその他の医学を取り入れた統合医療に取り組む医師であり研究者です。主に人の免疫機能の改善による治療方法の研究、実践をされており、著書『体の「冷え」をとって病気を治す!』では、「湯たんぽ」を使った免疫力改善方法を提案されており、丈夫な体をつくるために「体を冷やさない」「積極的に体を温める」ということを提唱されています。温度が人の健康に与える影響、医療の視点から住宅に求めることなどについて伺ってみました。(文/2008年10月現在)

体の「冷え」をとることで免疫力が上がる。

体を温めればリンパ球が増える

班目健夫さん

―著書『体の「冷え」をとって病気を治す!』では、免疫力を高めるために積極的に体を温めることを提案されています。なぜ、温めると体にいいのか、改めてそこから伺いたいのですが。

正直言って、これまで人の健康と「温度」の因果関係がわかっていませんでした。しかし、福田先生(日本自律神経免疫治療研究会理事長)や安保先生(新潟大学医学部大学院教授)の研究によって自律神経と免疫力の関係、また、「冷え」と自律神経の関係、病気との関係について明らかになってきました。福田先生は外科医ですが、晴れた日に盲腸の患者が多くなるということを疑問に思い、その因果関係について調査したのです。しかし、どの医者も答えることができなかったそうです。そして、唯一解決してくれたのが安保先生だったということです。そして、その一つの要因として気圧によって盲腸の重症度が変わるということがわかったのです。盲腸は白血球が増えることで炎症を起こします。白血球の中の顆粒球が、天気の良い日に増えるということを安保先生が証明しています。それ以来、天候や気圧・気温など、外的な環境と人の免疫力との因果関係について研究が進みました。

―免疫力が高い状態というのはどんな状態ですか。

リンパ球が多い状態です。リンパ球が白血球の中の35%を越えていて、絶対数として2100~2500個(1マイクロリットル当たり)あれば理想的です。「休息モード」のときは副交感神経優位の状態で、そういうときはリンパ球が増えます。私のところに来院される方の6~7割はガンの患者さんで、皆さん%でも絶対数でもリンパ球が少ない状態の方ばかりです。ただ、本にも書いていますが、湯たんぽを使ってガッチリ温めれば、簡単にリンパ球は増えるのです。

患者さんの膝の上に湯たんぽを載せてもらって、気持ちがいいか聞いてみます。体が冷えている人は真夏でも気持ちよく感じます。湯たんぽを当てて気持ちいいということは体が冷えている証拠なんです。湯たんぽを反復的に当て、体が温まることで血流が良くなり免疫力も高まります。体を冷やさない、体の冷えをとることは健康維持に繋がるのです。

―本には「汗かきの人には低体温の人が多い」とありましたが、たくさん汗をかくことは一見健康そうに思えますが。

汗かきの人は冷えている人が多いです。汗のもとが多い人は汗かきですよね。つまり水分を体に多く含んでいる人。「よくむくんでしまう」という人は水が溜まりやすい人です。水が溜まりやすいということは冷えやすいのです。常に濡れた肌着を着けているようなものですから体も寒いはずです。

でも、たいていの人は冷えていることに気付いていませんよね。ただ、もっと悪くなると汗腺の機能まで衰えて汗がかけなくなります。汗がかけない冷えの人もいます。でも、湯たんぽなんかを使って体を温めると、今度はむやみに汗をかくようになる。そうなるとやっとまともな冷えの状態になるわけです。そして、さらに体を温め続けて、体に水が溜まりにくい状態になると汗かきが治ってきます。

著書『体の「冷え」をとって病気を治す!』(写真左)と『「湯たんぽを使う」と美人になる』の2冊。健康に関心のある方は是非ご一読を。 著書『体の「冷え」をとって病気を治す!』(写真左)と『「湯たんぽを使う」と美人になる』の2冊。健康に関心のある方は是非ご一読を。

―体温が高いから汗をかきやすいと思ってしまいますが、逆なんですね。

冷えている人は自分の感覚では「熱い」と感じている人も多いのですが、実際に体温を測ってみるとやっぱり低いんです。先日来た人も体温を計ってみたら33.1℃しかありませんでした。でも本人は熱いと感じていましたね。ですから、熱を感じる感覚もおかしくなっているのだと思います。

「冷え」が体によくないことを知るべき

―そういう人が増えてきているんですか。

多いですね。ですから自分の感覚で判断すると失敗しますよね。

―増えているのはエアコンなどの冷暖房機器の普及の影響でしょうか。

それもあると思います。今は昔のように季節の変化をストレートに受けませんからね。体そのものが鈍くなっている状況もあるのだと思います。

―家も職場も、通勤電車も車もエアコンが標準ですし、むしろ夏に冷えて、冬に汗をかいています。

でも、一旦外に出れば夏はやっぱり暑いし冬は寒いでしょう。夏と冬を短時間に、しかも何度も行ったり来たりしています。そういう状態では皮膚感覚がおかしくなってきても不思議じゃありません。「夏の冷え」はかなり問題だと思いますね。

―東京に住んでいると特にそうなんでしょうね。そういう意味では、私たちが提案しているOM ソーラーの家は、高気密・高断熱の家に年中22℃をキープするような空調機器をつけるということではなくて、寒いなら寒いなりに、暑いときも暑いなりに、「ほどほど」の温熱環境を自然のエネルギーを使って得ようという家です。

家自体がちゃんと呼吸しているわけですね。最近の家に対する不満で多いのが「出窓」だと聞いたことがあります。出窓は冷気が入りやすい構造なのだと思います。その上、カーテンも出窓の部分だけしかなかったりすると、下から冷たい空気がスースーしてきます。冬、カーテンの傍で寝ている人はとても不快な思いをしているはずですよ。

―そして寒いからといって布団を厚くしたり、電気毛布を使ったりしますよね。

それは対策方法が間違っています。原因が改善されない限り、いくら対策しても根本解決にはなりません。狭い部屋ではどうしたって窓際に寝ることになるでしょう。そうすると「冷え」の影響を受けざるを得ません。せめてカーテンは床まで覆う長いものに交換し、頭と足の向きを変えて寝るだけで随分症状は改善します。ただ、普通の医者はそんなこと言わないです。でも、環境に起因する症状の場合は、その環境を改善してあげない限りよくなりませんからね。「冷え」は体によくありません。しかも、多くの人は「自分が冷えている」ことに気付いていない場合が多いのです。せめて「冷えが体によくない」ということに気付けば、皆さん用心するようになると思うのですが。ここに来られる方へは「冷えの改善」しか言っていません。でも、それだけで薬や他の治療方法で改善できなかった症状が、随分と改善しているのです。

―OMでは、よく「体感温度」の話をします。普通の暖房機器では、温風の吹き出し口では温度が高いけれど、部屋全体の温度にはムラが生じて不快感に繋がりますし、部屋毎の暖房のため、部屋と廊下ではさらに大きな温度差が生じて、ヒートショックの危険性が高まります。一方、OMソーラーの家では室温はそれほど高くないものの、部屋全体、または家全体の温度分布が均一なため快適ですよと説明しています。ある調査では、全館暖房が普及している北海道では、脳血管に関する疾患が本州の寒い地域に比べ少なくなっていると報告されています。OMではこれまでプラスアルファの意味での「快適」ということだけを伝えてきましたが、マイナスを除去するという意味で、暖房の価値をもっと伝えたいと思います。

住環境など、環境が健康に与える影響については、近年たくさんの調査・報告があります。中でも「温度」が健康に与える影響はとても大きいと思いますね。寒い地域でもっと普及すればいいですね。ただ、そう簡単に家を建て替えるわけにはいかないでしょうから、ここでも、せめて脱衣所くらいは温めてくださいと指導しています。やはり「温度差」というのはとても刺激になってしまいますから。先日も、神奈川県にお住まいの年配のご夫婦がお見えになり、ご夫婦ともに「いろいろな治療方法を試したが、冷えがどうしても治らない」というので、どんな家に住んでいるか聞いてみたところ、江戸時代から続く立派な家に住んでいるそうです。隙間風がひどくてしょうがないと仰っていました。タイマーの設定など、エアコンの操作もよくわからないそうです。仕方ないので、息子さんに来ていただいて説明して、暖房の運転を設定してもらったらよくなったと仰っていました。

「太腿」と「お尻」を温めると効果的

湯たんぽも進化している。上写真は、体に当てても痛くないウェットスーツ生地でできたもの。 湯たんぽも進化している。上写真は、体に当てても痛くないウェットスーツ生地でできたもの。

上写真のオレンジ色のものは左側が足湯用、右側がマジックテープでどこにでも巻けるようにしたもの。上写真のオレンジ色のものは左側が足湯用、右側がマジックテープでどこにでも巻けるようにしたもの。

―こちらでは投薬などはしないのですか。

ここには薬が嫌いな人がきますから。基本的には生活習慣から、住環境の改善などの提案まで行っています。住環境といっても、家を建て替えられれば一番いいですが、なかなかそうはいきません。ただ、暖房機器を入れてもらうなどで改善することもあるので、なるべくコストが掛からず実効的な方法を提案しています。温熱療法で身体環境を改善することとともに、住環境など生活周辺の環境改善もとても大切になります。そして、その一つの方法が「湯たんぽ」を使った温熱療法です。「湯たんぽ」ならどこの家にもありますよね。購入するにしても安価です。ただ、使用方法が重要になります。寝るときにだけ使っている人がほとんどだと思いますが、それでは効き目がありません。

朝起きてお湯を沸かして、以後4時間に1回くらいお湯を沸かし直して使います。膝の上を温めても膝頭やお尻、腿の裏は冷えているでしょう。順番に回して温めて「冷えをとる」ことが大切です。「冷えている」ということはその部分の血液の循環が悪くなっているということです。例えば、内臓の血流が減ったら内蔵の機能が衰えるでしょ。仮に、何かの病気になっても内臓の血流が良くなって機能が高められればカバーできるわけです。上手くいけば病気も治りやすくなる。ここではそんな治療をしていて、ガンが消えてしまった例がいくつもあります。

「冷え」なら必ず治せる病態です。また、今罹っている病気から「冷え」の要素を取り除くだけで、随分と症状が変わってきます。そして、そこには住環境の良し悪しもとても影響してくるということです。

―どのように温めたらいいのですか。

全身の筋肉の約70~80%が膝からお尻の間にあります。また、3 :1 の割合で大腿部前面が後面よりも筋肉量が多くなっています。ですからまずは太腿、お尻から温め、さらにお腹、二の腕などを温めると効果的です。足先が冷えるからよく足先から温める人がいますが、足先だけ温めても太腿とお尻を温めない限り温まりません。足先だけ温めて全然ダメだった人でも、太腿とお尻を温めることで改善した人が何人もいます。他を温めるくらいなら、まずは太腿とお尻をじっくりと温め、熱を蓄えることです。 汗をかきそうになったら、位置をずらしながら温め、次にお腹や二の腕を温めてください。

―こうして温めることとともに、OM ソーラーのような住環境は有効に働くと考えていいのでしょうか。

住環境というレベルでは「冷えをとる」というところまでは難しいでしょうが、温度差が生じて足元がスースーしてしまう他の暖房機器や、「廊下や脱衣所が寒い」といったような体に負荷を与えることがないという点はとても大切です。床が冷たくなくて、家の中に温度差が無いのは理想的ですね。

食事を摂るように「熱」をとる

ある乳ガンの患者さんがここに来て、それまでリンパ球を培養して血液中に戻す免疫療法を受けていましたが、やっているうちに1400 個あったリンパ球がみるみる減少していって、700 個を切ったときに見切りをつけたって言っていました。そして、ここに来て湯たんぽで温めたら2日後に2400個まで増えました。それまでは相当治療費も掛かっていたと思います。でも湯たんぽ1個に敵わなかったわけです。

―如何に「冷え」が体に悪いかですね。

誰もわざわざ冷やしているわけじゃないんだけどね。現実には冷えているのが当たり前になっていて、如何に「冷えていることに気付いていない人が多いか」ですよね。

―結果的に病気になってみないと気付かない。

そう。そして「乳ガンです」と言われてビックリしてしまう。リンパ球が下がった状態が長く続くことでガンを発症していると考えられなくもないのです。もしかして、湯たんぽを使って日常的に体を温めている人はガンにならないかもしれません。ただ、それを証明することは難しいことですけどね。

でも、体が冷えているとリンパ球が少ない状態になってしまうことは証明していて、そのことを世界で初めて発見したのが私なんです。それまでは、リンパ球が1000個以下の状態を治療する方法はありませんでした。でも、湯たんぽを使って温めることで3日ないし5日で効果が出ます。

―それは、湯たんぽを使い続けないといけないのですか。

体が変わらない限りそういうことになります。逆に、体が変わらなくてもコントロールできるならそれはそれでいいと思います。

皆さん食事は1日3回摂りますよね。それと同じように、必要な人は「熱」をとらないといけません。体に必要なものだからとればいいんです。漢方薬を使っても冷えは治し難くて、物理的に温めるしかないんです。

そう言うと「電気で温めるのはダメですか」と言う人が必ずいますが、カロリー数(熱量)が足りなくてダメですね。長時間使えば電気の熱量が勝りますが、それまでには体が温まるので、そこまでの熱量は要らなくなります。湯たんぽのリズムが人間にちょうどいいんです。

―最後に住まいに関して何かありますか。

何にしても、温度差があることは良いことではないですね。温度差は「負の刺激」になりますから。いわゆる更年期障害として「冷え・のぼせ」がありますが、あれは熱の分布が狂っている場合に起こることです。元々熱は上に昇る性質がありますが、人間の体でも同じなんです。頭がカッカしてパタパタ仰ぎますが、そうするとなけ無しの手足の熱がさらに昇っていってしまい悪循環になってしまいます。だったら冷えたところを温めてあげればいいんです。そうすることで温度が平均化します。

―体の中にも温度差をつくらないということですね。

そうです。そして、住環境としても温度差がないことが望ましい。OM ソーラーの家の温度分布は好ましい状態だといえます。

―医療全体を見渡してみても、対症療法から予防医療へ、あるいは西洋医学から統合医療へ移行しつつあるようです。そして「冷えがよくない」ということが社会に浸透していけば、もしかしたら医療費が大幅に削減されるかも知れませんね。今日はとても勉強になりました。本当にありがとうございました。

班目健夫(まだらめ・たけお)

1954年生まれ。
1980年岩手医科大学医学部卒業後、同大学院(病理系)入学、第一内科入局。
1984年医学博士に。東京女子医科大学附属東洋医学研究所研究生、助手を経て、東京女子医科大学附属成人医療センター自然医療外来担当。
2004年より東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック講師となり、現在に至る。西洋医学の専門領域な内科、肝臓学、消化器内科。西洋医学と、東洋医学などのよいところを取り入れた統合医療を研究、実践している。

班目健夫(まだらめ・たけお)