第5回:中嶋朋子さん

国民的ドラマ「北の国から」で蛍役を演じ、北海道の大自然の中で過ごした経験から「環境」にも高い関心をお持ちの女優の中嶋朋子さん。洞爺湖サミットで記念上映も行った映画「KIZUKI」では、主人公の母親役で出演されており、ご自身の仕事を通して地球環境を守るためのアプローチをされています。
環境問題に自然体で対峙する中嶋さんから、映画について、またご自身の「気づき」について、そして、家や暮らしについてお話を伺いました。(文/2008年6月現在)

着物も木の家もOMも「循環」の環の中にある

100人いたら、100通りの「気づき」があっていい

中嶋朋子さん

―今回、中嶋さんが出演されている映画「KIZUKI」では、環境問題がテーマになっています。まずは、この映画についてお伺いしたいのですが、関わることになった経緯から教えてください。

私は「北の国から」というドラマを通して北海道の大自然の中で育ったようなところがあって、私なりの「自然観」をお話しするような機会がよくあります。私自身、自然に囲まれている時が一番好きですし、環境問題に対してもささやかではありますが何かできればと考えていました。

今は、日常的にも環境に貢献できる方法はいろいろとありますが、いざ「仕事」に戻ってみるとやっぱり正反対のことをしているのが実情です。撮影では自然に逆らうようなことばかりしています。「これでいいのかしら」なんて思うことも少なくありません。

しかし、今回は自分の仕事として地球環境を守るためのアプローチができるということで、とても嬉しく思いました。これまで、ドキュメンタリーとして関わったことはありましたが、映画として、ストーリーを通して皆さんに考えていただく機会というのはあまりなかったので、是非とも協力したいと思いました。

KIZUKI
映画『KIZUKI』
http://www.eigakizuki.com/

―役どころとしては、主演であるお子さんの母親役ですよね。

普段の生活に追われて大切なことを取りこぼしていってしまう。そして、子どもを通して大切なことを再発見し、気づいていくというストーリーです。「子どものために」とか「仕事を全うしよう」とか、彼女にしても良かれと思ってやっていることが、いつの間にか彼女自身を蝕んでいき、家族関係にもひびが入っていく。

実際の社会の中でも「何でこんなことになっちゃうんだろう」ということのほうがむしろ多いのではないでしょうか。何しろ「良かれ」と思ってやっているわけですから。ちょっとしたボタンの掛け違いがこんな結果を招いてしまう。でも、少しずつでもそのズレは修正していくことができる。ささやかでも希望に繋がればいいなと思います。

私は、「あれをしてはいけない」「これをしたらダメ」ということでは、世の中変わっていかないと強く思っています。「頑張ったのはわかった。でも、こういう頑張り方もあるよね」というふうになっていければいいなと思って参加していました。

―押し付けるのではなく、「気付き」を与えられるような?

私の中では、環境問題を解決する100%の回答はまだないと思っていて、皆さんがそれぞれ研究している段階であったり、「こっちのほうがいいんじゃないか」「いや、こういう方法もある」なんて、まさに進化の途中にあるように思っています。だから「これが正しいんです」とか「これは間違っています」なんて言い切れないように思うのです。

それよりも、100人いたら100通りの「気づき」があっていいし、100通りの参加の仕方があると思っています。その人なりのオリジナリティで、「私はこういうことができる」「私はこれをやめてみた」という話をたくさん聞きたいし、教えて欲しいと思います。だから、「自分は何もできないから」と止まって欲しくなくて、私自身がそうですが、「私はこんなことしてみました」ということを皆でシェアできたらいいと思います。そこからしか「はじまらない」と強く思うので。今回の映画もそのきっかけになれば素晴らしいと思っています。

―今回の映画に限らず、以前からそのようなお話はされていましたよね。

そうですね。私の場合は北海道との縁が深くて、私の後ろには大自然のイメージが広がっているようです。その関係で、「小さい頃に経験した美しい自然について話して欲しい」といったお話をよくいただきます。「環境活動家」というスタンスとは少し違っていて、「自然と一緒にいるとこんなに楽しいんです」というお話をしているだけなんですが、そういう機会はたくさんいただきましたね。

「知恵」を活かして発展する―実に美しい発想

中嶋朋子さん

―環境関連のイベントで中嶋さんと初めてお会いしたときは着物を着ていらっしゃいましたが、「着物を着る」ということも、単に「日本の伝統文化の継承」ということだけではなくて、突き詰めていくと「エコ」に繋がっているわけですよね。着物も長く着られているんですか?

よく着るようになったのは3、4年前からですね。それまでは知らないことだらけですし、高価なものであるとか、とても敷居が高かったです。でも、現代的に着物にアプローチしている人と知り合って、もっと気軽に着れるものだということを教わりました。若い人でも自分なりに楽しんで着ることができるものなんだって。

それまでは、自分の中で着物に対するイメージが固着されていて、「こうじゃなきゃいけない」とか「決まりは守らないと」という勝手なイメージがありました。でも、昔の人はむしろ着物は自分を「粋」に見せるための表現方法の一つとして捉えていて、いろいろな組み合わせを楽しんでいました。

「着物は自由なもの」ということに気づいて、着物を着ることがとても楽しくなりました。そうしたら、着物が自分や社会の中で「固まっている」ことが、とてももったいないことで、ナンセンスだと思うようになりました。着物が楽しく着られることで、文化が残り、職人さんの技も残っていくわけです。そういうことが大好きです。

―時代の変化に合わせて残っていくということが、本当の意味で「継承していく」ということかもしれませんね。「正確に維持していく」だけではダメなのかも知れない。

もちろん、とっても美しいとか素晴らしい「伝統」というものはありますが、今の様式に合わせていく、そこから新しいものを見出していくということもとても素晴らしいことで、いろんなものが絡み合って自分の中でピンときましたね。

エコという観点からも、例えばスーツなんかはお父さんのものは着られないですが、着物なら着られる。「長方形」という形は変わりませんから。仕立て直せるということも含めて、大きな環(循環)の中にあるもののように思いました。そう気付いたときに、楽しみながら、自分の人生のサイクルの中に入ってきて欲しいものの一つだと強く感じましたね。くたくたになって着られなくなっても、エコバッグやクッションカバーとして循環の環にいられるわけです。

―「仕立て直せる」これは家にも共通していることですね。仕立て直すことでまた使える。そこには「知恵」も活かされています。

「知恵」を活かして、さらに自分たちを発展させることができる。実に美しい発想だと思います。自分なりに着物を着こなす。まさに「私ができること」の一つですね。

それから、着物は国際的な交流を図りやすいですよね。着物を着て海外に行く。それだけでコミュニケーションがとれますし、とても大事にされます。皆さん着物に興味津々で、あっという間に友達ができるし、いろんなところをスルーできます。「着て来て」とか「居るだけでいいから」なんて言われて。こんなに楽しくて、こんなに皆に喜んでもらえるなんて、とってもいい衣装ですよ。

よく着るのが大変とか、着ていると苦しいんじゃない?なんて聞かれますが、着れば着るほどだんだん楽になっていって、「自分なり」になっていきます。だから、自分の「成長」や「進歩」も感じるんです。ここまで着られるようになったか、なんて。とてもいいですよ。

いい家を建てる条件は「自分をよく知ること」

中嶋朋子さん

―全く家にも共通していますよね。今のお話の「着物」の部分を「伝統的な木造建築」にそのまま置き換えることができると思います。

原点や伝統に触れることで、「こうじゃなきゃいけない」と漠然と思っていた部分が見えてくるようになります。マニュアル的な理解とは違った目を持つことになるのだと思います。

―工務店の家づくりでも、職人の手作業や山で木の伐採を見ることで、家を建てたいと考えている人の「ものの見かた」が変わっていきます。循環の環の中にポンと身を置いてみる、それだけで「気づく」ことはたくさんあるはずです。

自分がどういうところに立っていて、自分はどういうものが好きなのか意外に知らなくて、そんな状態で過ごしていることが多いということに、まずは気づくことが大切かも知れないですね。家をつくるときにも、自分に意思がない場合はとても難しいのだと思います。流行だとか好きな色くらいはあっても、それでは3、4年で後悔することになるかもしれませんよね。

建築家の方とお話をする機会があって、「素敵な家を建てるのに一番大切なことは何ですか」と質問したところ、「自分をよく知ることです」と答えられました。何が好きで、何を心地良いと思うのか、そして何を大切にしているのか。それがないと何も提案できないとおっしゃいました。

そのことを聞いたとき「目から鱗」でした。専門家に何でも聞けばいいや、なんて安易に思っていましたから。それと同時に、コミュニケーションとは意外と難しいことだと思いました。共通の価値観はあっても、細かなところまでの一致はなかなか得られない。

例えば「青が好き」でも、青にもいろいろあって、それぞれの思っている「青」が少しずつズレているのが実情です。「そうだよね」と言い合えることって、家族であっても難しいことですよね。お互いが少しずつズレていることを知ること、そして、そのズレをお互いに許容できることは、とても大切なことだと思います。そして、それとともに、なるべくズレが生じないコミュニケーションができるように、自分の「ボキャブラリー」を増やしたり、感覚的なことを含めた「引き出し」を増やすということが重要なのだと感じます。

―夫婦間でもそのズレはあって、家づくりのときに初めて顕在化するケースも少なくないようです。

日頃からのコミュニケーションの問題がそういうときに出てしまうのでしょうね。溜まってしまうと良くないですよね。歪が大きくなってしまう。いつもある程度の余白を持ちながらコミュニケーションすることが大切で、なお且つ、自分は何が好きなのかをわかって、それを伝えたいという熱を持たないと難しいです。メールで簡単に連絡が取れる時代だからこそ見落としてはいけない。

「違い」があっても、それを理解できていればよくて、そこが曖昧だからどちらも責任が取れなくなる。責任が取れないことが揉め事になってしまいます。自分が大切にしていることがわかり、許容できる範囲もわかれば、それを伝えられるし、手を繋ぐことができます。今は、自分が大切に思うことは何か、それをなるべく探すようにしています。

自分たちの暮らしの時間が刻まれていく家がいい

中嶋朋子さん

―それはまさに、積極的に「気づく」努力をされるということなのだと思います。OMソーラーはまさに「気づき」の連鎖から浸透していく家づくりだと思っていますが、では、まず「入口」で何を伝えたらよいか、ということの難しさは感じています。

例えば、暑かったら打ち水をする。そこを通ってきた風が汗に触れることで涼を感じるとか、家そのものや服そのものが涼しくしてくれるのではなく、そういった環境と人の機能(代謝)の応答の中から涼しさを得る工夫など、私たちは素晴らしい「暮らしの知恵」を持っています。それを使わないで手放してしまうのはとてももったいないことです。

自分が胸を張って自慢できるような工夫を暮らしの中に持っているということは、とても素敵な生活といえるのだと思います。一つ一つを愛でる生活というか、愛着を持てる暮らしというか。私も愛着を持てるものに囲まれて暮らしたいですから。

―そういった素敵な暮らしに触れる機会をつくるとか、体験していただくということなのでしょうか。「気づき」のチャンスをつくるということですよね。OMソーラーの社屋「地球のたまご」も、その一つです。

中嶋朋子さん

いいですよね。私も行きたいんですよ。すごく素敵だと思います。

―そう思っていただける方と、「何でこんなに草ぼうぼうなの?」という方の2つに反応が分かれます。中嶋さんのような方や専門家、子どもたちにはとても喜んでいただけます。中嶋さん自身が好きな家というのはどんな家ですか?

私もそのことをすごく考えています。本当に家をつくりたいと思っているので。今、自分は何が好きなのか探しているところです。でも、基本的には風を感じるとか、ムクの材料に囲まれて裸足で暮らしたいと思っています。

自分たちが暮らしていく時間がアクセントになっていく、刻まれていくような家がいいですね。その土地に生えている木で家を建てて、床を磨いて磨いてだんだん飴色になっていくとか、日焼けしても、家に射し込む光を楽しんだ痕跡に思えるとか、この家がいろいろな関わりの中で建てられ、暮らしと密接に関わり、そのことが物語として繋がっているような家。いろいろなことを差し引きして最後に「愛着」が残る家がいいですね。

―OM ソーラーについての印象はいかがですか?

昔、親戚の家で資料を見たことを覚えています。後に、「循環」という考え方が発想の原点になっていることを知って、昔の家と考え方が同じなんだと感心しました。「循環」の環の中にあるという点がとてもいいと思います。

―中嶋さんから「循環」という言葉を聞き、とても嬉しくなりました。共感できるお話をたくさん伺い、楽しい時間を過ごさせていただきました。本日は本当にありがとうございました。

中嶋朋子(なかじま・ともこ)

女優。東京都出身。砂岡事務所所属。
1975年に劇団ひまわりに入団し、1976年にテレビデビュー。1981年から2002年にフジテレビで放送されたテレビドラマ『北の国から』の黒板蛍役で一躍有名に。
1990年に出演した映画『つぐみ』では各映画賞を受賞し、舞台などでも活躍中。他に、朗読、執筆でも独特の感性を発揮。
近年では、ジャズ、民族音楽、オーケストラとのコラボレートで古典の朗読劇に取り組むほか、映像作家としても活動を開始している。現在、NHK大河ドラマ「篤姫」に出演。
主な受賞は、エランドール賞(1990)、ブルーリボン賞助演女優賞(1990)、第16回おおさか映画祭助演女優賞(1991)、日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞(1992)など。

中嶋朋子(なかじま・ともこ)