第30回:マエキタミヤコさん

「この人に聞きたい」第30回目は、エコ関連の企業、団体等を中心にコミュニケーション戦略、ブランド構築に取り組まれているマエキタミヤコさんです。「100万人のキャンドルナイト」「ほっとけない世界のまずしさ~ホワイトバンド」「フードマイレージ」「いきものみっけ」などの仕掛け人であり、エコや環境、貧困などの社会問題に意識の高い方は、聞いたことのあるプロジェクトもあるのではないでしょうか。
これらの数々の取り組みの中から、情報発信やコミュニケーションの際において大切なことは何かについてお話を伺いました。
(文/2011年7月現在)

世の中、味方半分、敵半分がちょうどいいんです。OMソーラーはもっと敵を作りましょう(笑)。

広告はバッシングを受けるくらいじゃないといけない

写真:マエキタミヤコさん

―マエキタさんの印象は、常に前向き、ポジティブに物事にぶつかっていくという印象ですが、いつからそういったスタイルなんでしょうか。

よく“戦闘的”だとは言われます(笑)。でも、自分としてはそんなつもりはなくて、“勇気を持つ” とか“ひるまない”という表現のほうが合っているかなと思います。自分が「なるほど」、「そうだな」って思うまで何でも聞くし、理不尽だと思うことはたとえ上司であろうと、社長であろうと「それはおかしいんじゃないですか」って口に出てしまいます。なんでそういう子に育ったのかわからないけど、小学校の頃からそういう子だったみたい。

―その、“ひるまない心”や“勇気”を支えているバックボーンは何なんでしょう。

「向かっていった方が受ける傷は浅い」と思っているからかなぁ。確かにひるまないでいると、バッシングはあるけれど、その分味方も付いてくれるのでは。そのことは会社勤めしていた頃に教えられました。とにかく私は“マイウェイ”な人だったので、新人で右も左もわからないのにマイウェイだったから、ずいぶん失礼なこともしていたと思います。「あいつうるさいからいらない」って、プロジェクトから外されることもしばしば。最初は悪口言われることにも慣れていないもんだからメソメソしていると、有名なディレクターのおじさんから「敵ができた分、同じだけ味方も増えるもの。ただ、敵は見えるけど、味方は見えないんだよ」と教わりました。ずいぶん勇気付けられたことを覚えています。“嫌われれば嫌われるほど、応援してくれる人も増える”っていうのは面白い考えですよね。

―広告もバッシングを受けるくらいじゃないといけないという話を仰ったことがありますが、これも「敵半分・味方半分」という考え方と同じですか。

“バッシング”って基本的に底が浅いんです。その瞬間の感情は事実かもしれませんが、そういった表面上のエネルギーが全体に波及するかというとそうでもないんです。かといって“好かれよう”と思うと目立たなくなってしまいます。広告的には“賛否両論”というのが理想的な状況です。“嫌われてもいい”、“嫌いな人は嫌い、好きな人は好き”、半々くらいが丁度いいんです。“俺あのCM嫌いだな~”“えっ、私は好きだけどな~”っていう感じ。ハッキリと好みが分かれる、いわゆる「物議を醸すもの」は商品が良く売れるんです。シェアが100%の商品なんて電力以外ないわけで、普通は半分から好かれたら十分です。“万人から好かれる”とか“優等生になる”というのがコミュニケーション(広告)の目標ではないですし、情報も過当競争に晒されていて、小さなスペースで如何に目立つかが問われています。まぁ、そんなことばかり考えているから、戦闘的になっちゃったのかもしれないですね(笑)。

―なるほど。マエキタさんのポジディブさの理由が良くわかりました。私たちも見習います!そんなマエキタさんが実際に広告を考える上では、どんな手順で進めていくのですか。

「知らない人」に「知られていく」には、“分からなさの研究”が必要です。なぜ知られていないかというと、“分かられていない”からです。多くの場合、“分かられない”ことを直視することに耐えられなくて研究が中途半端になります。“分からなさ”にしつこく向き合い、調査し、研究できるかどうかで勝負が決まるというのが私の広告理論の全てです。だからプロセスは容赦ありません。容赦ないというのは「なぜダメなのか」ということを徹底的に分析するという意味です。どう言葉にするかをよくよく注意しないと、クライアントの心をぐさっと傷付けてしまうこともあります。

もちろん結果的にいいところは褒めるんだけれども、その前にダメなところが把握できていることが大事なんです。ネガティブ研究は、決して犯人探しをするという意味ではなくて、誰がどこで間違ってこうなったのかをきちんと把握することですので、実はすごくポジティブな行為なんです。

OMソーラーの工務店が一堂に会する全国経営者会議でプレゼンをしてくださったマエキタさん。
OMソーラーの工務店が一堂に会する全国経営者会議でプレゼンをしてくださったマエキタさん。

―いいところを伸ばす”とか“強みを活かす”という言葉がよく語られますが、その前にダメ研究ができていないと意味がないんですね。

世の中の価値観は時代と共に変わっていくので、白か黒かっていうくらい分かりやすければいいのですが、良いとか悪いとか、強みとか弱みという基準は不変ではありません。ダメなところが永久にダメであり続けるとは限らないので、どこが強くて、どこを伸ばすかということを把握する意味でも、ダメなところを把握するということは大事なんです。

―ダメな部分に気付くだけではなく、なぜダメなのかを遡って研究することが大事なんですね。

例えばOMソーラーでいえば、この時代にもっと伸びていていいはずです。伸びていない理由は大々的に広告をしていないということも大きな理由だと思いますが、その表現が不特定多数に届く内容ではなかったということが考えられます。 広告は科学です。そして、不特定多数というのは「知らない人たち」のことです。「知らない人たち」に知らせるためには、知らない人たちの立場になることが大事です。その人たちが知りたいことを、どれだけ早く、凝縮して、ストレス無く伝えられるかということです。それを考える時に、“わからなさの研究”が生きるわけです。

広告って“代わり”がきかないんです。テストもできません。エリアテストなど、新商品の発売前に試験的に調査することはありますが、現実には人も時間も動いているわけですから時間を戻して正確に再現できるわけではありませんよね。そういう難しさが広告にはあります。また、「知る」「知らない」のメカニズムはすごく面白い。一度知ってしまったら、知らなかった頃の自分には戻れない、知った時の感覚や感情を後から検査することはできません。知らなかったときの自分を忘れてしまうということもあります。知らないことを素直に「知らない」と言えないところがあったり、「教えて」という言葉がなかなか出なくてつい「知ったかぶる」というのも現実です。コミュニケーションって簡単に言うけれど、実は上手くいかないことだらけなんです。“連絡”が上手くいけばもっといい世の中になるはずなんですが、上手くいかないのが現実で、だからメディアの役割があったりするわけですが、なかなか難しいですよね。

これは広告だけではなく、全てのコミュニケーションにおいて共通することですね。

だからこそ、コミュニケーションに投資をするということはすごく重要なことです。それは組織内の業務であれ、友人関係であれ同じことですが、広告というコミュニケーション能力が高まることは、知らない未来のお客さんと連絡が取れることであり、仕事が増えることに直接繋がっていくわけです。

OMソーラーは“チョー新技術”

マエキタミヤコさん

―OMソーラーについてはどういう印象をお持ちですか。

私自身の生い立ちの話になりますが、小さい頃海外で暮らしていたり、様々な国を旅する経験をする中で、日本の民主主義は何かが違うということに気付きました。日本がこんなことになっているのは皆が“わからなくていい”っていうことにつけ込まれている結果だと思うんです。エネルギーのことも、家のこともそうです。終身雇用の大企業勤め、ローンを組んで建売住宅を買うことが、国の基幹産業として位置付けられています。こういった既成概念を崩していくことで売れていく商品がいいなーと思うようになりました。その方が日本は自由になるし、本当の民主主義に近づくんだと思います。OMソーラーはまさにその希望の商品だと思います。新技術なのにローテクというところがいい、反面これがわからなさの一つになっています。

―OMソーラーは新技術ですか(笑)。

チョー新技術ですよ(笑)。どこが“チョー新技術”かって言うと、既成概念を崩さないといけないからです。“熱交換”っていう言葉だけを聞くと立派な機械を想像するけれど、開けてみると“管があるだけ”みたいな(笑)。日本人って、そこが理解できないんだと思うんですよ。“自然のメカニズムがすごいから、機械は単純”ということが理解しにくいんですよね。そういう意味では“なぜ広がらないのか”というより、“よくぞ生き残ってきた!”というのが驚きであり、喜びです。

―戦後、家づくりの価値感がガラリと変わってしまって、大事なことを考えなくていいようにさせられた気がします。そんな中で、大事なことに気付いていた人たちがOMソーラーを見つけてくれたり、地域工務店で家を建てることを選択してくれて、少しずつ建てられてきた気がします。

そう思います。抵抗勢力もあるし、まだまだ闘いは続くと思いますが…。OMソーラーは、本来、とってもポジティブな商品なんだけど、だからこそ今の社会ではネガティブな商品なんです。OMソーラーが批判されるのは優秀過ぎるからです。冬に暖房入れなくても暖かいなんて意味不明ですもん。「そんなわけない」って。でも実際に体験すると「ホントだ」ってなりますよね。ストーブやエアコンで暖房するのが当たり前になってしまって、私たちから言わせると普通の人たちは洗脳されてしまっているんです。でも、洗脳されている人たちが99%になってしまうと、逆にこっちが異端になってしまうんです。そこを崩していくには、こちらが「“これからはコッチなんだ”」ということを言い、「電気はちょこっとでいいんだ」と言わなくてはいけません。そして、「“これから”なんだけどハイテクじゃないんだ」、「ハイテクじゃなくてローテクだけど“未来”なんだ」、「そこが“凄い”んだ」ということを、OMソーラーの会社の人たちだけでなく、全国のOMの工務店さんにも説明してもらわなくてはいけません。

もちろん、理屈や裏付けとなるデータは大事ですが、心を動かすのは“凄い”とか“びっくり”することです。誰も言ってくれないなら自分がメディアになって言えばいいんです。人は有名であるとか、後ろ盾がないとか、だんだん気にしなくなってきました。むしろこれからは、無名なことや後ろ盾がないほうが信用される時代になるのではないかと思います。

敵に対しては「チャーミングアプローチ」

マエキタさんが手がけた仕事。100万人のキャンドルナイト。雑誌『エココロ』。フードマイレージ・キャンペーン。
マエキタさんが手がけた仕事。100万人のキャンドルナイト。雑誌『エココロ』。フードマイレージ・キャンペーン。

―OMソーラーはこれまでどちらかというと、理論的に説明し、データを示し、住まい手の声を紹介したりして、できるだけ客観的に伝え、選択を委ねるというような情報発信が多かったように思います。自分たちで“凄くいいです!”とは言ってきませんでした。

もっと上手に押し付けなくっちゃね。ナマケモノ倶楽部の辻さんは「スローでいいんだ!」と言って財界のおじさんたちが反発しても言い続けています。おかまいなしが素敵です。一方でなぜ反発するかというと、スローでいいことを認めてしまうと経済成長や自分たちがしてきたことが崩れてしまうからです。そこには摩擦が起きます。それでいいんです。これまでのOMソーラーは優等生的な表現だったので、摩擦に慣れていないのかもしれませんね。

―「敵半分、味方半分を目指そう」と。

摩擦が起こったとき、単に反論したり、尻込みしたりするのではなく、相手や周囲の人が「なるほど、そういう考え方もあるか」「確かに一理あるな」といった感じで納得してもらえるのがいいですよね。たとえ論破できたとしても、そこで100%勝つことは得策ではないんです。日本人って判官贔屓なところがあるから返って負けた方に感情移入してしまいます。だから相手にもその周囲の人にも共感してもらうというのがイメージとしては近いのかな。

―マエキタさんが以前から言われている“チャーミングアプローチ”というコミュニケーションの手法ですね。

目立つということは摩擦が起こるということです。以前、六ヶ所村の核再処理工場をテーマにしたグリーンピースの広告で「でちゃう放射能」という広告を出しましたが、物議を醸しました。メディアから注文が付くくらいの表現のほうがいいんです。

エイモリー・ロビンスがNHKの「未来への提言」という番組の中で「人々がエネルギーが必要と思うのは、温かいご飯や温かい家であって、大きくて油まみれのタービンが欲しいわけではありません。だけど、エネルギーをつくっている人たちは大きくて油まみれのタービンが好きなんです。この目的の転換をしなければなりません」と言っていました。

また、京都大学原子炉実験所の小出教授は「たかが電気のために人類の将来を危険に曝すことはできない」と仰っていました。温かいご飯や温かい家は、電気がない時代からありましたよね。電気なんてちょっとあればいい。エネルギーがつくる側の目的でつくられているからまずいんです。住んでいる人の幸せが目的なんです。OMソーラーにはそれがあります。これからお客さんはスペンドシフト(希望をもたらす消費)していきます。押し付けなきゃいけないこともあるんです。原発の押し付けは困るけど(笑)。広告はある程度上品じゃなければいけませんが、現場はもっと押し付けていい。OMソーラーは地に足が着いた技術なんだから。

―マエキタさんとお話をしていると、こちらにも元気と勇気が沸いてきます。今日からできそうな気付きもたくさんありました。今日はどうもありがとうございました。

マエキタミヤコ

サステナ代表。コピーライター、クリエイティブディレクターとして広告代理店に勤務。1997年よりNGOの広告に取り組み、2002年に広告メディアクリエイティブチーム「サステナ」を設立。雑誌『ecocolo(エココロ)』スーパーバイザー、「100万人のキャンドルナイト」「ほっとけない世界のまずしさ~ホワイトバンド」「フードマイレージ」「いきものみっけ」「エネシフジャパン」など。

マエキタミヤコ