第24回:レオナルド・ベヌッチさん

連載「この人に聞きたい」第24回目は、元プロバレーボール選手で現在はイタリア語の講師、また、タレントとして活躍の場を広げているイタリア人のベヌッチさんです(以下、愛称の「レオ」さんと呼ぶ)。レオさんはOMソーラーの家の住まい手でもあり、「第2回/2万家族の太陽と一緒の暮らしコンテスト」に作品を応募してくださいました。作品の見出しには“「やられた!」…「すごくいいじゃない」…「ありがとう」=OMソーラーの快適”と書かれており、OMソーラーの家づくりの経緯が綴られています。今回、あらためてレオさんにOMソーラーの家づくりに至った背景や家づくりの考え方について伺ったほか、イタリアと日本の暮らしの違い、家族や子育てに対する想いなどを伺うことができました。
(文/2010年8月現在)

OMを見つけてくれてありがとう!諦めずにススメてくれて感謝します。

誰も要望に応えてくれない、一時は家づくりを諦めかけた

写真:レオナルド・ベヌッチさん

―コンテストにご応募いただき、ありがとうございました。作品の中ではOMの選択は奥さんが一生懸命だったと書かれていますよね。あらためてOMの家づくりの経緯から伺えたらと思います。

そうなんですよ。OMは私じゃなくて、彼女の発想だったんです。最初はお金も無かったから家を新築するつもりはなくて、横浜近辺のマンションを探していました。でも天井の高さがあまりにも低くて断念せざるを得ませんでした。イタリアではマンションでも天井高は3mくらいあるんですが…。それで、一軒家なら大丈夫だと思ってしばらくは中古住宅を探していたんです。でも築50年以上の古民家なら天井は高いんですが建具が小さ過ぎるし、築20年前後だと天井も低くて建具も小さくて、結局満足できる家は見つかりませんでした。比較的新しい家では、天井も高いところで2m30cmか40cmくらいありましたが、それでも服を脱ぐときに照明器具に手が当たってしまうなど、ストレスを感じることが多かったです。そして、中古住宅を探すのを諦めて、住宅展示場のモデルハウスや新築の見学会などを見に行きましたが、状況はそれほど変わらなかったですね。構造だけなら天井は高いんでしょうが、断熱材が入ったり、防音材が入ったり、照明なんかも最近はダウンライトが流行ったりしていて、そうすると益々天井が低くなりますよね。新しい家でも廊下なんかは2mそこそこという高さで、歩くだけならギリギリ通れますが、ちょっと跳ねたら完全に頭をぶつけてしまいます。

コンテストに応募された作品。コメントからはレオさんの人柄がよく伝わってくる。 コンテストに応募された作品。コメントからはレオさんの人柄がよく伝わってくる。(クリックして拡大

―ちなみに身長はおいくつですか。

厳密には199cmちょいですが、薄いスリッパを履いたら2mですね。なんだかんだで1年間くらい探しました。毎週末必ず1,2軒は家を見に出掛けていましたね。

―場所も横浜から湘南近辺へ移っていったわけですね。

そうなんです。この辺に友だちが住んでいてパーティーに呼ばれて来てみたらとても気に入ってしまったんです。イタリアでも海のほうに小さな別荘を持っていますが、同じ雰囲気がして「やっぱり海がいい」ってなったんです。でも結局、中古住宅は見つけられなくて、「じゃあ建てよう!」ってことになりました。それからいろんな会社のモデルハウスや見学会を見に行くようになったわけです。「またモデルハウス?またモデルハウス?」って嫌になるくらい(笑)。そして、「あーしたい、こーしたい」と様々な要望を伝えて、実際にいろんな会社から回答やプランが出てきたわけですが、答えは大きく二つに分かれました。一つは「それは無理です」「それも無理です」といった“できません”ばっかりの回答です。例えば私は天井高が3m欲しかったんですが、「うちの規格ではその天井高には対応していません」という答えで、その他の要望にも同じような回答ばっかりでした。

そしてもう一つは全く逆で「何でもできます」という回答でした。でもその言葉の前には「お金さえあれば」が必ず付き、要するに全て特注(オプション)対応という扱いで、それではとんでもない金額になってしまうわけです。

最初は「うさんくさい」、「ぼったくり」だと思った

―後者の回答も事実上は“できない”ということに等しかったわけですね。

玄関を入ると土間があり、土間から階段がのびている。 玄関を入ると土間があり、土間から階段がのびている。

そうなんです。それでもう諦めるしかないと思いかけたときに、奥さんが住宅雑誌から「ねえねえ、こういうのがあるよ!」って見つけてきたのがOMだったんです。「すごいよ!屋根の上にソーラーパネルが載ってて、でも発電じゃないんだよ」「太陽で空気を温めて床下へ下ろして家全体が暖かくなるんだって」「冬、ベッドから出るのに寒くないとか、トイレに行くにも寒い思いをしなくていいらしいよ」って何だか興奮気味に話していて、私は「何それ?わけわかんない。うさんくさくない?」「怪しい、絶対ぼったくりだよ」って取り合わないでいたんです(笑)。奥さんは「見に行こうよ」って何度も誘うんですが、「一人で行ってきたら」って全く相手にしませんでした。そんなことで暖かくなるわけがないでしょ、キチンとした暖房をしないとダメだって言って。

―イタリアではどのような暖房が一般的なんですか。

ファンコイルなんかを熱源にしたセントラルヒーティングですね。

―家は石造り?

石やレンガが多いですね。木造はほとんどないです。

―冬は寒いんですか?

イタリアは日本と同じで、北のほうは北海道のようにめっちゃ寒くて、南のほうはシチリアからちょっと手を伸ばせばすぐアフリカですから(笑)、めっちゃ暑いんです。

―レオさんはどのあたりに住んでいらしたのですか。

私はフィレンツェに居ましたからちょうど真ん中あたりです。

―日本でいうと東京や横浜と同じような感じでしょうか。

そうですね。でも、日本と違って湿度が低いから同じ気温でも寒く感じます。夏も乾燥しているのでたとえ気温が40℃近くても日本のような暑さはないですね。

―そんなことから日本では暖房には気を使われたわけですね。

そうです。奥さんにも暖房にはちゃんと気を遣わなきゃダメだと言ってましたね。私も日本に来てだいぶ経ちますが、暖房が入った一つの部屋に皆が集まって閉じこもって生活しているというのは考えられませんでした。暖房している部屋だけが異常に暑くて、部屋の中では真冬でも半袖なのに、ちょっとトイレに行くときにはまるで冒険にでも出掛けるような格好して行かなきゃならない(笑)。その温度の差が大嫌いでしたね。イタリアではセントラルヒーティングが当たり前でしたから、室温はそれほど高くありませんが家の中が均一な温度に保たれていて、どこにいても温度差がありませんでした。「日本の家って何でこんななの?」「こんなに技術が進んでいる国なのにどういうこと?これじゃあ家建てられないよ」って思いましたね。「使わない部屋は暖房しない」「家中暖房するのはもったいない」という考え方は日本人の良い所かもしれませんが、現実にはつらいですよ。ですから、イタリアや北海道の暖房機器など、いろんな暖房方法を検討しました。そんな時に奥さんがOMを見つけたんです。私は絶対にウソだと思っていましたが(笑)。奥さんは「一回ぐらい見に行こうよ」って一生懸命誘うんですが、私はシャットアウトしたまま一旦イタリアに帰国してしまったんです。

春が一足先に来ちゃったような暖かさ

―そう作品にも書いてありましたね。

玄関から居間方向を見る。手前が和室になっており、階段室を挟んで1階も2階もほぼワンルームのつくり。 玄関から居間方向を見る。手前が和室になっており、階段室を挟んで1階も2階もほぼワンルームのつくり。

それで奥さんも諦めたのかと思ったんですが、一ヵ月後、日本に戻ってきたその日のことですよ。成田からようやく横浜に着いて「ただいまー、今帰ったよ」と玄関を開けたら、そこには出掛ける支度を整えた奥さんが待ち構えていたんです。「どうしたの、どこか出掛けるの?」そういう私の腕を取って「さあさあ行きましょう、いいから、いいから。行き先はサプライズよ」と言って、私を急がせるわけです。新しいレストランでも見つけたのかなーと勝手に想像していたら、車の中で「OMの家を見に行くのよ」とキッパリと言われました。その瞬間「やられた!」と思いましたけど、ここまで来ちゃったらもういいやと思って奥さんに従いました。着いたのはOM工務店の社員の方のOMの家でした。ちゃんとアポを取っていて彼女の作戦だったんです。その日は寒い日でしたが家の中に一歩足を踏み入れると、そこはまるで陽だまりのようにポカポカだったんです。第一印象は「何これ!この家だけ春が一足先に来ちゃったみたいじゃない、どうして?」といった感じで、暖房機器による人工的な暖かさではなくて、自然の温もりが家全体を包み込んでいるかのようでした。「すごくいいじゃない。ウソじゃなかったのね」その時から私のOMに対する見方が180度方向転換しました。

―イタリアではセントラルヒーティングによる暖房費はどうなんですか。

日本ほど高くはないと思いますが、それでも結構掛かっていると思います。

―イタリアの人は暖房費の節約は考えるんですか。

結構我慢しますよ。イタリア人は11月までは暖房は点けませんし、点けても設定温度は低めです。20℃とか21℃とか。少し寒いですけど着るもので対処します。冬は家の中でもウールが基本です。それが日本に来たら真冬なのにTシャツ姿だったり、真夏なのにセーターを着ていたりします。おかしいですよね。逆ですよ。セーターは冬、Tシャツは夏です。このことを他でもよく話しますし、話せば分かってもらえるけど、現実は夏もセーターなんです。イタリアでも若者の世代は暖房と冷房にやられていて、日本みたいになりつつあります。だから地球温暖化がどんどん進んでしまいます。冬はちょっとだけ温める、夏はちょっとだけ涼しくすればいいんです。特に会社なんかに行くと日本は夏でもネクタイにスーツ着用です。ありえません。イタリアではポロシャツですよ。襟もある、生地がいい、色も派手じゃない、ズボンもきちんとしています。それで仕事に行きます。夏にホワイトシャツにタイ、ジャケット着用なんて死んじゃいますよ(笑)。

写真左はレオさんのお宅の施工を受け持った工務店、富士ソーラーハウスの染谷さん。決して染谷さんが小さいわけではありません。 写真左はレオさんのお宅の施工を受け持った工務店、富士ソーラーハウスの染谷さん。決して染谷さんが小さいわけではありません。

―昔は夏は浴衣、冬は厚い着物を着ていましたが・・・。

アジアは湿気が多いということもありますが、夏に電車に乗って東京のほうへ向かうと暑さが一段と激しくなります。冷房の室外機がバンバン回っていて熱気が外に排出されているからです。

―ヒートアイランドですね。

自殺行為じゃないですか(笑)。3~5℃くらい上っていると思います。都会では至るところから熱気が出ています。

効率主義ではない「家づくり」と「子育て」

家づくりの話と共に子育ての話も熱く語ってくださったレオさん。 家づくりの話と共に子育ての話も熱く語ってくださったレオさん。

―家づくりにおいても外との応答が希薄になり、機器に頼った生活が当たり前になってしまうのはこういった問題を助長することだと考えられます。

いつも思いますが、何で日本で洋風の家を建てるのか理解に苦しみます。イタリアで和風の家をつくるわけがありません。異文化が魅力的だというのはわかります。でも、日本以外で和風の家が流行っているというのは聞いたことがありません。

―レオさんの家も日本の家の良さが生かされていますよね。

そうですね。折角日本に家を建てるんですから、日本らしい家を建てたかったですね。

―作品の中でも土間のことが書かれていましたが、良いコミュニティの場になっていることが伺えました。ブログの中でも「効率主義ではないイタリア人的価値観の料理や子育て手法を伝えたい」と仰っていますが、OMと共通の価値観を感じます。

イタリアといえばエスプレッソ。エスプレッソを入れてくれるレオさん。 イタリアといえばエスプレッソ。エスプレッソを入れてくれるレオさん。
レオさん曰く、「食べるより早くできる“ティラミス”」。つくり方の動画がネットにもアップされている。 レオさん曰く、「食べるより早くできる“ティラミス”」。つくり方の動画がネットにもアップされている。

日本人とイタリア人の国民性はともかくとして、仕事と家庭のバランスをどう取るかというのは子育てにおいて大変重要な要素だと思っています。経済的な面で仕事優先というのはわかりますが、行き過ぎるとそのバランスを崩してしまいます。今でもよく覚えていますが、私が幼い頃父親はよく一緒に遊んでくれましたが、父親の仕事が忙しくなるにつれ、父親の存在感は希薄になりました。大人は子どもには父親の存在感などわからないと思っていますが間違いです。基本的に子どもは大人と同じです。ただ身体が小さいというだけです。複雑なことはわからないかもしれませんが、両親からどのくらいのエネルギーをもらっているかは敏感に感じています。そして、親こそが子どもからエネルギーをもらっているんです。私の基本的な考え方は、仕事に偏り過ぎると家族は苦しむということです。もちろん経済的には楽になりますし、感情的にも居ないからといってすぐに困るということはないかもしれません。しかし、悪いBGMのように効いてくるんです。

―知らぬ間に侵食されていくような。

そう。会社の居場所が増えるにつれ、家庭での居場所を失わないように気を付けなければなりません。気付かずにいると家庭で居場所がなくなって、そのうち「まあいいや」と仕事漬けに陥ります。本人もまずい状態であることがわかっていても「仕方がない」で片付けてしまいます。「仕方がない」は日本人が大好きな単語ですよね。「お金を家族に届けている」それを大義にしてしまうのです。でも、届けないといけないのはお金だけじゃないんです。常にベストなバランスを保つのは現実的には難しいことですが、仕事に忙しかった時期があれば、その分家庭に居る時間を意識的につくる必要があります。シーソーのようにバランスを取ることが大事だと思います。

―レオさんご自身もそれを実践されているし、そのことを社会全体にもメッセージしていきたいと思われているということですね。

そうですね。まだ具体的な機会はありませんが、社会にとって役立つメッセージだと思っています。

子どもからのギブに対して親もきちんとギブする

―単にOMソーラーの家に住んでいる外国人ということではなくて、このような考え方を持っている方がOMソーラーの住まい手であるということを私たちも伝えていきたいと思っています。

日本人も子育てには熱心だと思いますが、こういったテーマをきちんと伝えているメディアはまだ少ないのが現実のようです。電車の中吊り広告を見ても、成績や塾、学校のランキングばっかりです。子どもとのギブアンドテイクはとても重要です。子どもはたくさんギブしてくれますが、一方でテイクして欲しいのです。身の回りに無条件にギブするのが“子ども”なんです。私の娘は私が家に帰ってくるのを窓から見掛けると急いで外に出てきて、ぴょーんと私に抱きつきます。それが私にとってどれほどのテイクになっているかわかりません。彼女以外にそれをしてくれる存在はありません。120%のテイクです。だから私も彼女にギブしなくてはいけません。子どもからすると、無条件にギブして、ギブした分テイクされないとエネルギーは空になってしまいます。そして、いつまでもテイクされないとテイクを諦めてしまいます。よく電車の中で携帯に夢中のお母さんを見掛けますが、子どもが話し掛けているのに気の無い返事ばかりで相手をしてあげないのです。子どもも3,4回は話し掛けますがそれでもダメだと諦めてしまいます。そのときの子どもの寂しそうな表情は悲痛です。何ですぐ傍にいる子どもより、遠くで携帯を持った相手を優先するのか。もしかしたら仕事かもしれませんが、象徴的な光景です。遠くからの情報が即座に届くことが可能な時代になり身近な存在が軽視されているような気がします。身近な存在ほど意識することを大事にしたいと思っています。

―そういえばこの家にはテレビがありませんね。

エアコンもありませんよ(笑)。

―この家は見るからに家族のコミュニケーションを大事にされていることがわかります。

オープンなつくりで出掛けたり帰ってきたときもいつも家族の存在が伝わるように意識して考えました。オープンだから夏は風が良く通るし、OMのおかげで冬も快適です。

レオさんが描かれたOMソーラーのイラスト。レオさんが描かれたOMソーラーのイラスト。

―コンテストの作品の中でレオさんが書かれた「今でもポカポカの自宅で、こんなことを時々奥さんに言うことがあります。“(OMを)見つけてくれてありがとう…あきらめずにススメてくれて感謝しています”って」という言葉が印象に残っています。今回お話を伺い、OMはまさに奥さんからのギブであり、コンテストの作品はレオさんからのギブだったのかもしれないと思いました。そしてOMが提案しているのも「自然からのギブ」なんだなぁ、と改めて思いました。楽しいお話の中にもレオさんの熱い想いを伺うことができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

レオナルド・ベヌッチ(Leonardo Benucci)

イタリア・トスカーナ州フィレンツェ出身のイタリア語講師。イタリアソムリエ協会(AIS)認定ソムリエ。
元プロバレーボール選手。 身長200cm、体重90kg。愛称はレオ。
イタリア語、日本語、英語、スペイン語の4ヶ国語が話せるマルチリンガル。
テレビ出演作品は、NHK『イタリア語会話』『テレビでイタリア語』、朝の連続テレビ小説『ウェルカメ』など。
OMソーラーの家の住まい手。Webサイト:http://lucaleo.cocolog-nifty.com/

レオナルド・ベヌッチ(Leonardo Benucci)