第22回:いしかわじゅんさん

連載「この人に聞きたい」第22回目は、漫画家であり漫画評論家でもあるいしかわじゅんさんです。的を射た評論、広い見識、歯に衣着せぬ物言いなどから、近年はコラムニストやコメンテーターとしても活躍されています。そんないしかわさんは10年前にシステム住宅・フォルクスAでOMソーラーの家を建てられた、OM住まい手でもあります。真贋を見極める眼の持ち主であるいしかわさんにOMソーラーはどのように映ったのか、また、実際にOMの家に住んでみての感想などをお聞きしてきました。 (文/2010年3月現在)

僕もOMソーラーを広めたいと思っている一人なんです。

OMのしくみは簡単、だから皆びっくりする

写真:いしかわじゅんさん

僕はいろんなところでいろんな人に「OMソーラーっていうのがあるんだよ」「家建てるならOMの家がいいよ」といって勧めているんです。建てたときにもらったパンフレットがいくつか残っていたんで、パンフレットを渡したり、家を建てそうな人には家に連れてきて家中見せたりしています。

―ありがとうございます。では追加でパンフレットを送りますので、今後も是非よろしくお願いします(笑)。

そうして下さい。来た人に渡しますから。

―でも、勧められた人もOMのことはご存知ないと思いますが、OMを知ったときはどのような反応をされるのでしょうか。

家に連れてきて家中見せて、冬暖かくて夏涼しいというのを体感するとかなり興味は示しますよね。この前も知り合い二人が家に来て、一人は夜中までいて、寒かった日ですが家の中は夜中の12時でも20℃ほどあったんです。(※)それで暖房していないというとびっくりしますよね。そうすると「何でこんなにあったかいの?」「いくら掛かるの?」「どうやって建てるの?」なんて具体的な話になります。細かいことはわからないのでウチの場合の話をしますが、「ソーラー」っていうとみんな発電のことだと思っていて、「そうじゃなくて太陽の熱をそのまま取り入れているんだよ」という説明をすると、「そんなことができるんだ」といった具合にびっくりしますよね。とにかくみんなOMのことを知らないので話をするとまずは驚きますよ。

※暖かさは、建てる家の立地条件や仕様、気候によって異なります。


―その人たちは太陽電池を付けようとは思わないんでしょうか。

太陽電池はここ数年で発電効率もかなり高くなったし、まだまだ効率がよくなるんじゃないかと思っているのか、僕の周りではあまり考える人はいないみたいですね。その点、OMは難しいことやっているわけじゃなくて、ファンが一個付いているだけですから簡単ですよね。だから、みんなびっくりするんですよ。でも、まだまだ知らない人が多いですね。

―そうなんです。そういう意味でも気付いてもらいたいのですが。

キャラクター:キャラクター好きのいしかわさん。部屋のそこかしこにキャラがいっぱい飾ってあった。
キャラクター好きのいしかわさん。部屋のそこかしこにキャラがいっぱい飾ってあった。

よく新聞広告が出ていましたが地味でしたもんね(笑)。基本的に説明が多いんだけど、説明は別のところですればよくて、まずはどうやって興味を惹くかが大事ですよね。あーいった真面目な広告だと読む人も限られるでしょ。もちろん僕は興味があったから隅から隅まで読みましたけど、普通の人は通り過ぎちゃうんじゃないですか。やっぱり絵や写真のような目を惹くものがないと手を止めないですよね。僕はOMを広めたいと思っている一人なんです。今度広告やることがあったら僕に絵を描かせてくださいよ(笑)。

実際に住んでいる人の声を信用した

―ありがとうございます。住まい手であるいしかわさんにそう言っていただけると心強い限りです。

デスク:デスク周りは書類が山積み、書棚からも本が溢れ、仕事場は本で埋め尽くされていた。いしかわさんの読書量を物語っている。
デスク周りは書類が山積み、書棚からも本が溢れ、仕事場は本で埋め尽くされていた。いしかわさんの読書量を物語っている。

歩いているとたまにOMの家を見掛けますがやっぱり嬉しいですよね、自分の選択が間違っていなかったという感じがして。僕の家は建築家の秋山東一さんに設計してもらったフォルクスの家なんですが、この家を建てるときは半年くらい、いろいろと勉強して、それでOMを知って、「よしっ、OMにしよう」と思ったんです。ところが、OMってOMの勉強をしている工務店でしか建てられないじゃないですか。それでOMの工務店をいくつか見てみたんです。
でも、どの工務店の建築事例を見ても僕が建てたい家のイメージと違っていて、良くも悪くもいろいろなこだわりが目立ったんですよね。僕は自分が建てたい家にOMのシステムだけ取り入れられたらいいのにと思っていたんです。そしたら、たまたま秋山さんのホームページを見つけて、秋山さんの設計の家がどれもカッコ良くて僕のイメージと合っていたんです。さらによく見たら、秋山さんは昔からOMに関わっていて、フォルクスの開発者でもあると書いてあって、この人なら大丈夫だと思ったんです。そして、実際にお会いして確信に変わったということです。

―OMに興味を持たれたのはどんなきっかけだったんですか。

とにかく家づくりに関することを、雑誌やネットなどで片っ端から調べましたね。そうやって調べていると、「OM」という文字が次第に目に付くようになってきたんです。それで、OMについて調べていくうちに、「これは結構いいかも」と思うようになったんです。ネットなどで調べているとOMの家を建てた人の体験談なんかも出てくるじゃないですか。実際にOMの家に住んでいる人の中でOMのことを貶している人はいませんでした。建築関係のサイトなどではOMのことを貶している書き込みも結構ありますが、実際に住んでいる人の声と同業者の声のどっちが正しいかといったら、そりゃ住んでいる人の声ですよね。それで一気にOMへ傾いていきましたよね。そしたら、たまたま僕の知り合 い二人がOMの家を同じ時期に建てていて、いろいろ情報交換したりしましたね。
後にも先にもOMの家に住んでいる知り合いは僕も含めて未だこの三人しかいないんですがね。

―やはりいしかわさんに広告を手伝っていただかないと(笑)。

そうですよ(笑)。少し遅れてもう一人、僕のファンクラブの子が、やっぱり僕の家に来て「OMの家を建てたい」ってなったんです。長野県の子で冬は寒いけど天気がいいんで絶対いいって言ってたんですけど、向こうは地縁血縁が強いから親戚の工務店で建てなくてはいけなくて、結局OMは諦めたということがありましたね。ただ、折角だからってOMのような設計の考え方は採り入れて建てたようです。

「住んで気持ちいい」というのが一番

中面顔:テレビでのコメンテーターとしての表情とは異なる、優しい笑顔の表情も垣間見えた。
テレビでのコメンテーターとしての表情とは異なる、優しい笑顔の表情も垣間見えた。いしかわさんイラスト:いしかわさんに描いていただいたご自宅のイラスト。太陽の陽射しの下で気持ち良さそうに漫画を読むいしかわさん。
いしかわさんに描いていただいたご自宅のイラスト。太陽の陽射しの下で気持ち良さそうに漫画を読むいしかわさん。

―特にずっと建築に興味があったというわけではなくて、自宅を建てる上での勉強だったわけですね。

一度建てようと思ったことはありましたけど、離婚することになってしまってそのときは実現しなかったんです。独りになって、その時はマンション住まいだったんですが、どっちにしろ家を建てるだろうと考えていたし、当分結婚する予定もなかったから一人用の家を建てようと思って、マンション を売って、土地を買って、建てたのがこの家だったんです。その後、結婚したので今はちょっと手狭になりましたけど。素人なりに一生懸命勉強しましたね。

―最近はOMソーラーの家は「エコハウス」の一つと呼ばれていますが、建てられるときにエコの意識はあったんですか。

全くありませんでした。それどころかエネルギーは使い放題使っていましたね。この頃はあまりたくさん漫画は描いていませんが、当時は一日中漫画を描いていて、原稿用紙の状態を良い状態に保つことを優先しなくてはいけなかったんです。そのために室温は一定に保つ必要があって、特に 夏は紙が湿気を吸うのでエアコンは付けっ放しでしたね。OMに関心を持ったのはエコの意識というよりも、実家に住んでいた頃の寒い思いからです。ウチに限らずどこの実家も昔ながらの戸建ての家では冬寒くて夏暑いのが当たり前なんでしょうけど、冬なんか暖房してある部屋から廊下 に出るとすごく寒いでしょう。風呂から上がったときも寒い思いをしなきゃならないし、布団に入ってからも身体が温まるまで待ってなきゃいけません。特にウチの実家は親父が県会議員をやっていたのもあって、むやみに大きいんです。家の中に集会用の部屋がいくつもあって、床面積で400坪くらいあったと思います。そんなに広いと暖房なんて仕切れないわけです。家を建てようと思ったときに、実家の記憶が蘇えってきたんです。マンションはコンクリート造だから冬は比較的暖かいじゃ ないですか。

―「木造戸建て」に対して寒いというイメージが強かったわけですね。

そうなんです。だから何とか冬寒くない戸建ての家が建てられないかというのがスタートでしたね。それで調べはじめたら夏涼しくする方法もあるようだったし、「冬暖かく、夏涼しい家」ということで探していったらOMに行き着いたんです。

―今は住宅業界もエコ花盛りですが、いしかわさんは「快適性」からスタートされたわけですね。太陽熱を使っているので結果的にはエコなんですけど、やはり快適さの提供があってこそ支持もしていただけるんだと思っています。

居間:仕事場とは一転してきれいに片付いている1階の居間。愛猫二匹も気持ち良さそうにソファで寛いでいた。
仕事場とは一転してきれいに片付いている1階の居間。愛猫二匹も気持ち良さそうにソファで寛いでいた。

やっぱり「住んで気持ちいい」というのが一番ですよね。床が暖かいからウチはスリッパ置いていないんです。この微妙な暖かさ、微妙な涼しさが気持ちいいんですよ。ウチは猫二匹と同居していますが猫たちもご機嫌です。ウチの猫は暑さ寒さを知らない猫ですね。一応全部の部屋にエアコンは付けたんですが、来客のときに使うくらいで普段はほとんど使わないです。オイルヒーターも置いていますが、普通はこんな大きな空間を暖めるためにオイルヒーターは使いませんよね。でも、寒いときでもこれ一台で十分足りています。特に健康に気を使っているわけではないけれど、結果的に健康にもいい暮らしができているんですよね。エアコンで暖めても暖かいんだろうけど、暖かさの感覚が違うんですよ。床や壁や天井が均一に暖かいのと、空気だけが暖かいことの違いなんでしょうね。

センスが合う人じゃないと任せられない

―家の設計の点では秋山さんにお任せだったということですが、秋山さんの印象はいかがでしたか。

素足:夏は素足と仰っていたが、取材当日は寒い日だったにも関わらず素足だった。
夏は素足と仰っていたが、取材当日は寒い日だったにも関わらず素足だった。

秋山さんの建築事例を見て、この人のセンスいいなー、この人となら一緒に家づくりができそうだと思いましたね。家づくりってものすごく選択肢が多いじゃないですか。ドアのノブから水道の蛇口まで、一つ一つ決めていかなくちゃならないですよね。でも、ある程度は丸投げしないと大変なのが現実なんで、センスが合う人じゃないと任せられないですよね。秋山さんにもいくつか注文したところはありましたが、ほぼ丸投げに近い形でお任せできたので、秋山さんと出会えたのはラッキーでした。OMと出会う前にもいくつかの工務店と話をしましたが、出てくるプランを見るとどこもダメでしたね。断っても2度3度と出してきますが、やっぱりダメなものは何回見てもダメです。僕は子どもが描くようなシンプルな家を希望していたんですが、そういう家は出てきませんでした。必要なものだけあればいいのに、いろいろ余計なことがしてあったりして。

―具体的にセンスの違いというとどんなことになるんでしょうか。

書:いしかわさんは書や陶芸も嗜まれている。しかも腕は個展を開催するほどのプロ級の腕前。
いしかわさんは書や陶芸も嗜まれている。しかも腕は個展を開催するほどのプロ級の腕前。

このあたりは割りと敷地に余裕があって、庭のある家が多いんです。隣の家の庭を活かすとか、周囲の状況を考えて明かりや風を取り込むとか、それくらい考えてくれるといいんですが、どれも家だけで考えたプランなんですよね。そういうプランはダメです。自分の家と周囲の家の関係がどうなっているのか、自分の家が完成したら周囲はどういう風景になるのか、そこまで考えて欲しいですよね。

―建築デザインと漫画やイラストのデザインとは通じるところがありますか。

カマタマーレ:香川県のサッカークラブ「カマタマーレ」のキャラクター。サッカー好きのいしかわさんがふとしたことがきっかけで応援することになり、キャラを制作。
香川県のサッカークラブ「カマタマーレ」のキャラクター。サッカー好きのいしかわさんがふとしたことがきっかけで応援することになり、キャラを制作。

結局は同じことだと思いますよ。僕は漫画だけじゃなくて、小説や書や陶芸もやっていますが、何かを作り出すセンスというのは多分共通していると思います。だから、家のデザインについても違いが分かるつもりです。例えば家の場合、一軒だけのデザインではなく、周囲との関係、バランスといった点にちゃんと目が行くかということもセンスですよね。一つだけ突出していてもしょうがない。全体を見渡す力というのは何をつくる上でも必要なことです。

―OMがそんないしかわさんの眼に適ったというのは、私たちにとっても励みになります。

いやー、本当にほぼ文句ないですね。ここまで快適だとはわからなかった。

―建てる前に予想していたことと、実際に住んでみての印象はいかがですか。

予想以上に快適ですね。冬こんなに暖かいとは思わなかったです。1階と2階の温度差が少ないとか、換気によって空気が新鮮だとか、資料に書いてあることは読んでいましたが、そういうのは大抵話半分なんで、エアコン付ける時間が減ればいいなくらいに思っていました。でも実際にはエアコン全然使ってないですからね。その点では全く文句ないですね。だからこの先故障したらイヤだなというのはありますね。まぁ、機械だからしょうがないし、単純なしくみだから直してもらえればいいんですですけど。

―仰っていただいた�予想以上の快適さ"を私たちとしてはどう伝えられるかが課題なんです。単に「暖かい」「快適」ではこの良さは伝わらないですよね。現状は、いしかわさんのように受け取る側 のセンスに頼っているようにも思うのです。

確かにわかりにくいというのはあるかもしれないですね。OMについてはかなりの時間を掛けて調べたつもりですが、僕もここまで快適だとはわからなかったですから。
夏休みとか長期に留守にしたときも、マンションの頃は帰ってドアを開けると淀んだ空気がモワーッとしているじゃないですか。OMではそれが全然ないですからね。留守中の猫の心配も減りました。 結局は地道に言い続けるしかないのかもしれないですね。ただ、その言い方が言葉の説明だけでは興味を惹かないので工夫は必要でしょうね。

―やっぱり絵の力は大きいですか。

書籍:書籍『秘密の本棚』(小学館クリエイティブ発行)。誰よりも漫画を広く深く読み込む漫画家の著者が旬の話題作から古典名作、コミック業界のウラ話や極私的エピソードからうかがえる有名漫画家の素顔まで次々に披露する。漫画評でもあり漫画エッセイでもある作品。
書籍『秘密の本棚』(小学館クリエイティブ発行)。誰よりも漫画を広く深く読み込む漫画家の著者が旬の話題作から古典名作、コミック業界のウラ話や極私的エピソードからうかがえる有名漫画家の素顔まで次々に披露する。漫画評でもあり漫画エッセイでもある作品。

大きいでしょうね。特に日本はあらゆるものを漫画で済ませる国だから。これほど公の出版物に漫画っぽいイラストが入っている国は他にないですよ。もはや「漫画による理解」というが日本人の思考に組み込まれていますから、漫画はインターフェースの一つとして大きな存在になっています。だから「漫画風の絵」の訴求力は大きいですよ。

―ありがとうございます。今日はお話を伺って大変励みになりましたし、漫画によるOMの表現についても、ぜひ考えてみたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

参考

システム住宅・フォルクスAサイト
http://omsolar.jp/va/

フォルクスA開発者・秋山東一さんのブログ
http://landship.sub.jp/stocktaking/

いしかわじゅん

1951年、愛知県生まれ。明治大学卒業後、社会人経験を経て漫画家へ転身。青年 誌から一般誌まで幅広く作品を発表する一方、エッセイや漫画評論、小説、テレビや 映画出演など多彩な分野で活躍。特にレギュラーとして出演している『BSマンガ夜 話』(NHK)での的確な漫画評には定評がある。漫画の代表作に『憂国』『薔薇の木 に薔薇の花咲く』『寒い朝』、エッセイでは『業界の濃い人々』、漫画評論では、従来に ない漫画評のスタイルを生み出したことで評判となった『漫画の時間』『漫画ノート』 『秘密の本棚』などがある。
いしかわさんの著書/『秘密の本棚』(小学館クリエイティブ発行) 誰よりも漫画を広く深く読み込む漫画家の著者が旬の話題作から古典名作、コミック業界のウラ話や極私的エピソードからうかがえる有名漫画家の素顔まで次々に披露する。漫画評でもあり漫画エッセイでもある作品。

いしかわじゅん