第15回:上岡裕さん

「この人に聞きたい」第15回目は、エコロジーオンラインの上岡裕さんにお話を伺いました。上岡さんには、2年前に東京で開催したOM全国経営者会議(全国のOM会員工務店とOMソーラー(株)による合同会議)にて、東京都環境局の谷口さんと共にご登壇いただき、OMを含めた太陽エネルギー利用の普及をテーマに対談していただきました。上岡さんは、東京都の太陽エネルギー利用普及啓発活動に様々な形で連携される他にも、環境省、林野庁といった行政から、毎日新聞社などの各種メディア、様々な業界の企業、そして、ミュージシャンやジャーナリスト、クリエイターなどとの連携を通じて、エコに関する活動に取り組まれています。今回は、最近のエコ関連の動きやこれから起こりそうな動き、今後のOMとの連携などについて伺うことにしました。(文/2009年6月現在)

住まい手や社会との連携の中で、OMの組織や役割も劇的に変化していくと思う。

金融危機を発端に、省CO2政策が一気に加速

写真:上岡裕さん

―ご登場いただいたOM全国経営者会議から2年を経過しますが、その後エコや環境に関する社会のムードがどのように変化してきたとお感じですか。

まさに激動の2年だったと言えるんじゃないでしょうか。もちろん、その前から僕らの中では激動だったんですが、それまで環境の取り組みの中だけで進行してきたことが、「サブプライムローン」「リーマンショック」などを発端とした金融危機が全世界に拡大したことにより、この経済危機を脱する切り札として、グリーンエネルギーやエコなど、環境関連の分野が一気に注目を集めるようになりました。僕らの活動としても環境と合致した取り組みを行ってきましたから、この2年でとても多岐に渡ってきましたし、行政とも深く関わるようになりました。特にこの半年の動きの変化が大きかったですね。

―環境やライフスタイルという分野だけでなく、社会全般が急加速しているということですよね。

そうです。僕たちの活動を通してサポートしてきた取り組みは、すぐ一般の皆さんも知るようになると思います。その具体的な例が「エコポイント」です。テレビや新聞でも報道やP R が盛んに行われているのでご存知の方も多いと思いますが、エコ家電の普及に国が予算を投入しています。

エコポイントだけでなく、エコカーの減税や補助金、太陽光発電の補助金、住宅でいえば200 年住宅の取り組みもその一つです。制度上の良し悪しはともかく、エコプロダクツの普及に関して水面下で進められてきた政策が、ここにきて一気に実行に移され、国民が意識せざるを得ない環境になってきました。

アメリカでも、いわゆる「グリーンニューディール」「グリーンエネルギー革命」という形で、古くなった電力網のスマート化や、家庭側でも「スマートメーター」と呼ばれる消費エネルギーの見える化が進められたりしています。当然、ヨーロッパではさらに先行する形で施策が進められていて、日本も欧米に負けないように、国がお金を出してまでエコプロダクツ、エコ産業のサポートをしはじめたということです。

―エコポイントやエコカー減税など、いわゆる買い替え促進より、長くモノを使うとか、ゴミを出さないほうが大事だろうという意見や、バラ撒き型の補助金も本質的な解決にならないといった批判もありますが、そういったことも承知の上で社会の変化を目指しているということなんでしょうか。

写真:太陽光発電施設感性イベントの様子
OMソーラーも参加した「TOKYOソーラーシティプロジェクト」の太陽光発電施設感性イベントの様子。
写真:太陽光発電施設「ひだまり~な」
太陽光発電施設「ひだまり~な」。お台場の都立潮風公園内に設置されている。

今まさに「環境」に対して大きなお金が動きはじめていて、その先に今とは別の社会が構築されるのだと言われています。この状況は一種「環境バブル」と呼べるのかもしれませんが、バブルは良いものも悪いものももたらします。私たちも環境をバブルにしてしまっていいのかということについては、とても判断が難しいところだと感じています。確かに「CO2削減」に限って考えれば、CO2 を出さないプロダクツの普及は効果的であることに違いありません。でも、ゴミ問題や循環型社会という視点に立てば矛盾が生じてきます。「低炭素社会」と「循環型社会」をどう両立するかが問われはじめていて、エコポイントは低炭素にしか目が向いていない政策だという批判も出て当然なんです。この2つの社会の他にも、「環境共生型社会」など、私たちがこの先持続的に生きていく上で、必要と思われるいくつかの社会の像があります。しかし、その全てを満たす社会というのは実はまだ答えは出ていなくて、いろんな考え方が出てきている最中ですし、正解はないのかもしれません。どこかを強調すればどこかに皺寄せがくる。エコポイントにもそういう面がありますし、エコポイントはエコロジーではなくてエコノミーだろうという意見さえもあります。環境政策ではなくて経済政策だろうという声です。この点についても、一般市民の皆さんが政策を有効に活用しつつも、さらに良い政策へ変えていくために意見を言ったり、消費行動の中で適切な判断をしていくなど、受け止め側の意識の変化も必要だろうと思いますね。

日本はエコ意識は高いが、エコなしくみができていない

―エコポイントと似ていますが「エコアクションポイント」という制度もあります。上岡さんはエコアクションポイントの検討委員もされていますが、どのように違うのでしょうか。

エコアクションポイントは、金融危機が起こる前から取り組まれていた政策で、環境行動(エコアクション)に対するインセンティブ制度です。環境配慮型の生活へ移行していくには、単に個人の道徳観に訴えるだけでは社会の変革には繋がらないだろうと。しっかりとした環境行動を根付かせるには、環境行動に対して何らかの見返り(インセンティブ)がある社会になる必要があるということから設けられた制度です。例えば、価格が割高なエコ家電を購入するという行動に対してポイントが付与されて、そのポイントが別の形で還元されれば、エコアクションも拡がるし、エコ家電も売れるだろうという考え方です。エコポイントは経産省、エコアクションポイントは主に環境省の政策です。でも、経済危機が起こったことで、エコアクションポイントを大きく上回る予算規模でエコポイントが制度化されたということです。水面下では制度を両立させるための検討も行われていたと思いますが。

―エコアクションポイントも京都などでは運用されていて、OM ソーラーの導入もポイントの対象になっています。

エコポイントは商品の購入の際に直接還元されますが、エコアクションポイントは間接的です。還元の方法も運用も自治体や企業、NPO が入るなど様々です。エコアクションポイントについての環境省の予算はいずれ縮小し民間主導で運用されていくことを目標にしていて、制度を普及させるためのモデル事業がいくつか行われています。京都はその一つということです。

―上岡さんと出会った頃、エコロジーオンラインは、エコとインターネットを結び付けて一般市民のマインドや行動を喚起するということに力を注がれていて、政策的なこととは距離があったように思いますが、この2年ですっかり関わりが強くなったようですね。

写真:地球温暖化防止を呼びかけるために生まれたキャラクター「そらべあ」
地球温暖化防止を呼びかけるために生まれたキャラクター「そらべあ」。空とソーラー(そら)、ホッキョクグマ(べあ)からネーミング。

そうですね。ちょうど環境ジャーナリストの村上敦君たちと地球のたまごに行った頃からですね。僕らも「普通の人のエコロジー」ということでエコロジーオンライン(以下EOL)を設立して来年で10年になりますが、今では「環境」や「エコ」は当たり前になって、新聞やテレビ、ラジオでも毎日のように取り上げられるようになりました。EOL はインターネットを活かした環境情報発信のメディアとして取り組んできましたが、テレビやラジオでやっていることを僕らがやらなくてもいいんじゃないかな、と思いはじめているところがあります。ただ、エコの意識は広がったものの低炭素社会のしくみづくりができていないのが実情です。ある調査によると日本人の環境意識は世界一高いと言われています。環境先進国と呼ばれているドイツ人よりも高いと。であれば、僕らの取り組みも普通の人のエコロジーから一歩踏み出したほうがいいだろうと考えています。そんなことでここ1年は「しくみづくり」に関わってきている状態ですね。ただ、これまで「普通の人…」向けの情報発信をしてきた僕らが、急に高いところから「こうあるべきだ」と政策提言するのもおかしいので、あくまで「普通の人代表」というスタンスで霞ヶ関に出入りしているといった感じですね。

フラットなネットワークが社会を変える

―上岡さんご本人の立ち位置も随分変わってきましたか。

写真:「Solar Songs in Odaiba 2009」の様子
「ひだまり~な」の電気を使用して行われた「Solar Songs in Odaiba 2009」の様子。

EOLも裾野が拡がり過ぎてしまって、どこの上岡さんですか?という状態なので、それぞれの活動を自立させつつ、僕の活動もEOL として一つに集約しようと考えています。僕がやりたいことは、ピラミッド型の組織をつくりたいわけではなくて、あくまでフラットなネットワークづくりです。一口に「環境配慮」と言っても、やり方は人それぞれです。家であったり、食べ物であったり、自転車であったり、植林したいとか。でもEOL がそういった活動全てを統括したいわけではなくて、そういった活動を下支えする活動というイメージです。オバマ大統領も参考にしたという『グリーン革命』という本があって、その原語版は『hot flat and crowded』というタイトルなんですが、直訳すると、「温暖化、フラット、人口増加」という意味です。いずれも今後の社会を予測したキーワードですが、中でも「フラット」というのは、インターネットによって世の中が全て平らになっていくということです。

僕は栃木県の佐野市出身ですが、OM さんは浜松ですよね、千葉にもエコな活動している人がいるし、大阪にも、広島にもいるはずです。それぞれの地域では少数派かもしれないですが、インターネットを使えば繋がれるわけです。EOLは、全国にネットワークを張り巡らせてエコを共通言語としたフラットなネットワーク組織をつくるために旗揚げしたんです。会社を辞めてアメリカに渡って、フリーライターをしていた時代に新しい社会の息吹を感じて、エコとインターネットを結び付ける仕事をはじめたわけです。坂本龍一さんとの出会いもフラットなネットワーク組織だったからだと思います。一般的な企業のようなピラミッド型の組織だったら繋がることはなかったでしょう。

―上岡さんもあくまでネットワークの一員ということですね。

写真:間伐作業を行う上岡さんの様子
「正直住宅普及の会」では森林活性に取り組んでいる。写真は、間伐作業を行う上岡さん。

でも単にネットワークがあるというだけでは錆付いてしまうので、補修したり、エネルギーを充填したりなど、メンテナンス的な役割は担うわけです。それから、これまで営利的なことはしてこなかったんですが、OMさんのような企業との連携による営利的な事業(バナー広告等)にも取り組んでいく予定です。ただ、特定の大手企業との連携だと、企業の考え方に影響を受けてしまう可能性があるので、地域の企業からも協力が得られやすい低いハードルでやっていこうと考えています。

―継続的な活動のためには、理解がある大手企業がスポンサーになってもらう方がいいんでしょうけど。

僕にとってはフラットでいられることが何より大事なことなんです。バランスを取るのは実際には難しいのかもしれませんが、間口を広くすることが結果的にフラットでいられることに繋がると思っています。最終的には読者の方や一般の方が自らやりたいことを選択できるようなメディアでありたいと思います。

OMソーラーの家は、暮らしの知恵や工夫に溢れている

―OMもEOLのネットワークの一員ですが、これからOM との関わりはどうなっていくでしょう。あるいは、OM の可能性がどんなところにあるとお考えでしょう。

エコに関して言えば、太陽光発電を設置したり、プリウスやインサイトに乗るなど、今すぐにできることもあるでしょうし、でもお金がないから何したらいいだろうということもありますよね。僕らとしては、これからできることの道筋を提供してあげられればいいと思っています。そう考えたときに、OMさんとしては、先日の「2万家族の『太陽と一緒の暮らし』コンテスト」でも感じましたが、すでに2万棟のOMの家と20年以上の実績があるわけですよね。OM ソーラーの家に住んでいる人には、コンテストの作品にあったように、暮らしの知恵や工夫があるわけで、OM 全体にしたら山のように知恵や工夫が転がっているはずです。お金を掛けずにすぐできること、できることの事例や道筋を、住んでいる人たちは示してあげることができるのです。

―住まい手との連携を積極的に図るということですね。

それと共に、EOLも完成形がないように、おそらくOM さんも社会の移り変わりと共に、どのように変化していくかが問われてくると思います。そのときにOMさんがどのような役割を果たしていけるのか、一緒になって考えていけたらいいなと思います。OM ソーラーの家を担っているのは地域の工務店ですよね。ハウスメーカーが悪いとは思いませんが、日本は地域によって気候風土が大きく異なるので、画一的な家づくりは難しいし、それをすると無駄なエネルギーが生じるように思います。200年住宅といっても結局は地域のことがわかっている工務店が存在しない限り成り立たないわけで、今後ますます“パッシブ”という考え方が重視されるようになると思います。また「クラウドソーシング」という言葉があって、これは「不特定多数の人たちに業務を委託する」という意味ですが、世の中がフラットになってくると、様々な人たちの情報や意見、思いをまとめて一つの形にするという作業が重要になってくると言われています。情報は住んでいる人の側にあって、企業の側にあるのではない。これまでの技術を自ら抱えるだけでは行き詰っていき、情報をオープンソース化していく必要がある。企業内で考えられることは知れているということです。その辺りはEOLとしても今後模索していく部分であり、OM さんとも一緒に考えることができればと思います。

―EOLとはネットワーク組織としてOMソーラーと共通する部分があるので、これからもいろいろと教えていただけたらと思います。今日は大変興味深いお話を伺いました。ありがとうございました。

上岡裕(かみおか・ゆたか)

NPO 法人エコロジーオンライン理事、NPO 法人ソーラーシティ・ジャパン理事、NPO 法人そらべあ基金理事、有限会社循環型社会ネットワーク研究所代表取締役、合同会社ライツフォーグリーン代表社員、DO! コラボシニアファシリテーター。1983年、国際基督教大学卒業。株式会社ソニーミュージック・エンターテインメント(SME)退社後、フリーライターに。2000年3月、環境情報発信を中心とするNPO法人エコロジーオンラインを設立。そらべあ、おひさまスタイル、クラブヴォーバン、DO!コラボなど、数多く協働事業を手がけている。2008年4月より京都精華大学非常勤講師。

上岡裕(かみおか・ゆたか)